『道をひらく』(松下幸之助著)を読む39
みずから決断を下すときに:「風が吹けば」
──逆境を乗り越える力は、冷静さと協力に宿る
『順風満帆は、例外である』
人生も経営も、穏やかな晴天ばかりが続くわけではありません。
むしろ、突然の嵐に見舞われ、舵を取るのもままならない日々のほうが多いのではないでしょうか。
• 業績が伸び悩む
• 突発的なトラブルに直面する
• 信頼していた人に裏切られる
こうした“強い風”が吹きつけたとき、人は慌て、うろたえ、間違った判断を下してしまいがちです。
松下幸之助氏は、そんなときこそ「まず、うろたえないことが何より大切だ」と語っています。
なぜなら、動揺した心で選んだ打ち手は、かえって状況を悪化させるからです。
誤った判断が、人生では取り返しのつかない傷となり、会社にとっては致命的な経営危機を招くことすらあります。
『危機のときこそ、「冷静」と「忠実」が力になる』
では、風が吹いたとき、私たちはどう行動すべきなのでしょうか。
松下氏の答えは、極めてシンプルで本質的です。
「まずは冷静に、そして、それぞれが自分の職務を忠実に果たすこと」
この基本が守られれば、組織の内部に確かな連携と信頼が生まれ、困難な状況も突破できる、それが松下氏の信念です。
• 慌てず冷静に現状を見極める
• 自分の役割に徹し、責任を果たす
• 周囲との信頼と協力関係を守り抜く
危機に強い組織には、派手なパフォーマンスや即効性のある「特効薬」は必要ありません。
必要なのは、誠実な行動を積み重ね、互いを信じ、力を合わせる文化です。
『「協力関係の崩壊」こそ、最も恐れるべきこと』
危機の最中、もっとも避けなければならないのは、パニックでも混乱でもなく、「信頼関係の崩壊」です。
どんなに優れた個人が冷静であっても、周囲の協力を失えば、問題の解決は困難になります。
松下氏はこう言います。
「恐れるべきは、風そのものではなく、協力関係が壊れてしまうことだ」
『風は、常に吹いている』
私自身も、これまでの経営人生を振り返ると、まさに“風に吹かれ続けた小舟”のような日々でした。
困難の波に揉まれ、未熟な私は何度も動揺し、迷い、力を失いかけました。
それでも、乗り越えられたのは、社員、取引先、友人、家族など、多くの方々の支えと協力があったからこそです。
その事実を、今改めて実感しています。
だからこそ、いま私たちが備えるべきは、
• 嵐が来る前に、冷静さを保つ心構えをもつこと
• 日頃から信頼関係を築き、協力体制を育てておくこと
風は、必ず吹き、そして、また必ず吹き止みます。
だからこそ、吹いているときにどう行動するかが、人生と経営の命運を分けるのです。
あなたは、風が吹いたとき、どう舵を取りますか?