『道をひらく』(松下幸之助著)を読む49
「みずから決断を下すときに」の振り返り
四番目の大きな章である「みずから決断を下すときに」を読み終えました。
前の章に続いて、どのような感想を持たれましたでしょうか。
それではここでも、私なりに各小章について、理解した内容を以下に要約してみます。
「断を下す」:まずは勇気をもって断を下す。下した断の結果は次の決断の糧とする。
「命を下す」:聞いて問うて説明する。納得しないと人は動かず納得すれば自ら動く。
「風が吹けば」: 揺れてもうろたえず流れに任せる。冷静に皆の協力を得る。
「判断と実行と」:実行こそが大事。6割でよいから勇気をもって決断し実行する。
「眼前の小利」: 本質を見失わない。小さな利益にとらわれると判断を誤り大損をする。
「善かれと思って」:善も悪も策を弄してはいけない。褒められようと思って賢さを見せつけるようではいけない。
「止めを刺す」:仕上げを確実に行う。最後の1割がそれまでの9割を台無しにする。
「カンを働かす」:勘やひらめきを大事にする。その感覚を研ぎ澄ます。
「世の宝」:仕事は世の宝。私心にとらわれることなく働く。
「自問自答」:自分を見つめなおす。原点を再確認する。
「根気よく」:焦る心を抑える辛抱と根気を養う。正しいと思うことも謙虚になって慎重に進めていく。
「思い悩む」:勇気を出して人に尋ねよう。思い悩むことは恥ではない。
以上のことから、松下幸之助氏はこの章では次のことを言いたかったのではないでしょうか。
「決断は私心を捨てて勇気をもって大胆に下す」
もっと言えば、
「決断する」
ということ。
そして最後にある締めくくりの文章を引用します。
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長い一生のうちに 人はいくたびか
自分の将来を左右する岐路に
血のにじむ思いで 立たねばならない
ながい歴史のうちに 国もまた いくたびか
みずからの行く末を鋭く見きわめるべき
意義深い時期に みまわれる—―――
緑ゆたかな国土 香り高い伝統と歴史
そこに培われた 民族のすぐれた素質
この日本の未来を いま静かに 見きわめたい
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松下幸之助氏は、人も国も、人生や歴史の中で何度か重大な分岐点に立たされるときがあり、そのときこそ、痛みを伴いながらも、自らの進むべき道を真剣に見極めなければならないとおっしゃっています。
日本は豊かな自然と伝統、そして優れた国民性を持つ国であることに皆が誇りを持ち、いまこそ私たちは、この国の未来を静かに、深く考えるべき時にあると教えてくれています。
この新しい国際化の時代に、日本人としての誇りと知恵をもって、未来の方向を真剣に考え直すよう私たちに訴えているのではないでしょうか。