『道をひらく』(松下幸之助著)を読む43
みずから決断を下すときに:「止めを刺す」
仕事がうまくいかない原因の多くは、実は「最後の詰め」の甘さにあります。
松下幸之助氏は、かつての武士たちが「止めを刺す」ことを怠るのを恥とした話を引き合いに出し、最後までやりきることの重要性を説いています。
これはまさに現代ビジネスにも通じる教訓です。
たとえば、プロジェクトがほぼ完了し「これで大丈夫だろう」と油断した瞬間に、不備や誤解が発生し、大きなやり直しに発展することがあります。
私自身、過去にあるジョイントプロジェクトで仕事は順調に進みましたが、最終的な報酬の分配方法を詰め切らずにいたため、信頼関係が揺らぐ事態を招いてしまいました。
成功と失敗を分けるのは、「止めを刺す覚悟」があるかどうかです。
では、実際のビジネス現場において、最後の「止め」を意識するためには、どのようにすればよいのでしょうか。
【具体例】
1. メールの送信前に、宛先・添付ファイル・本文を必ず再確認する
→ 宛先ミスや添付忘れで、商談や信頼が一瞬で壊れることもある。
2. 議事録をその日のうちにまとめ、全員に確認してもらう
→ 会議の内容を曖昧にせず、後の「言った・言わない」を防ぐ。
3. 納品前に、第三者による最終チェックを依頼する
→ 客観的な視点でミスを発見しやすくなる。
4. 契約書の重要条項(責任範囲・支払い条件など)を読み飛ばさない
→ 曖昧な契約が、後のトラブルや訴訟の原因になる。
5. プロジェクト終了時に「振り返りミーティング」を必ず実施する
→ 成功・失敗を言語化することで、次回の「止め」の質が上がる。
6. プレゼン資料のフォント、表記統一、誤字脱字を最終確認する
→ 最後の見栄えで「仕事の丁寧さ」が伝わる。
7. 顧客からのフィードバックを記録し、次回対応に反映する仕組みを作る
→ 受けっぱなしで終わらせず、改善するまでが「止めを刺すこと」。
8. 製品やサービスの納品後、フォローアップの連絡を必ず入れる
→ 取引が終わったあとに、信頼が深まるかどうかが決まる。
9. 完了チェックリストを関係者で共有する
→ 「終わったつもり」を防ぎ、仕上げの抜け漏れを減らす。
10. プロジェクト終了した2日後にフォローを入れる
→ 完了直後は盲点が多いため、少し時間を置いての確認が有効。
これらの例は、小さな気づかいや仕組みの積み重ねですが、「止めを刺す」文化を組織や個人に根付かせる上で効果的です。
特に成果主義が強まる現代では、"仕事をやり遂げる"、"後まで責任を持つ"姿勢が信頼と評価を生むカギになります。
「あと一歩」の詰めを怠らない。
それが、結果を確かなものにし、信頼と成果を積み重ねる最大の力となるのです。
ビジネスパーソンは、昔の武士のような厳格な「完遂の美学」を、いま一度取り戻すべきではないでしょうか。