『道をひらく』(松下幸之助著)を読む50
困難にぶつかったときに:「心配またよし」
心配があるのが「普通の人生」
私たちは、日々の仕事や人生の中で、絶えず「心配」と向き合っています。
資金繰りの不安、社員の将来、業績の低迷、健康や家庭の問題──。
振り返ってみれば、「何の心配もなかった時期」など一度もなかったのではないでしょうか。
松下幸之助氏は、そんな人の本質を見抜き、こう語っています。
「心配ごとや憂いは、新しいものを考え出す一つの転機である」
つまり、心配があるからこそ、人は知恵を絞り、工夫を凝らし、新しい道を切りひらく。
心配こそが「創造の原動力」だというのです。
不安の中から生まれる創造
経営の現場においても、それは真実です。
私自身、これまでの経営者人生を振り返れば、心配事のない日などありませんでした。
資金が足りない、人が足りない、取引が途絶える、法改正に振り回される……。
そのたびに、夜も眠れぬほど悩み、胃が痛くなるほど思い悩みました。
しかし今思えば、あの苦しみこそが自分を成長させてくれたのです。
不安と向き合い、どうにか打開策を考え、実行し続ける中でしか「経営力」は磨かれない。
もし何のトラブルもなかったら、私はきっと今のような経験値も判断力も得られなかったでしょう。
松下氏の「心配またよし」という言葉は、単なる慰めではありません。
それは、心配や不安を“避けるもの”ではなく、“味方につけるもの”として捉えよという教えです。
試練は、成長のための「設計図」
心配ごとがやってくるのは、あなたが「次のステージ」に進むためのサインです。
困難がなければ、人は安定の中で感性も鈍り、成長が止まります。
だからこそ、心配が訪れたときにはこう考えてみてください。
「これは、私を一段高めるチャンスなのだ」と。
焦らず、逃げず、粘り強く考え抜く。
その姿勢の積み重ねが、やがてあなたを「信頼されるリーダー」に育てていくのです。
不安を抱える自分を誇れ
心配事を避ける人生は、ぬるま湯の人生です。
悩み、苦しみ、もがきながらも一歩前に進む人こそ、真に強くなる。
「心配またよし」──この言葉を胸に刻み、困難を恐れず進むこと。
それが、松下幸之助氏の教えであり、未来を切りひらく最良の道なのです。