『道をひらく』(松下幸之助著)を読む53
困難にぶつかったときに:「困っても困らない」
人生や経営を長く続けていれば、誰にでも必ず「困難な時期」が訪れる。
業績の低迷、部下との軋轢、資金繰り、健康問題……。
「なぜ自分だけが」「どうしてこうなったのか」と思い悩む日もある。
だが、松下幸之助氏はそんな時、こう諭している。
「困ったときこそ、困らないことが大事だ」
一見、逆説のように聞こえる。
しかし、困難に直面したときほど人は心も体も固くなり、本来持っている力を自ら封じ込めてしまう。
「困った、どうしよう」と焦るほどに、視野は狭まり、解決策は見えなくなっていくのだ。
幸之助氏はこの状態を見抜き、こう説く。
「断じて行えば、鬼神もこれを避く」
つまり、困難を恐れず、気持ちを切り替え、「よし、やってやろう」と断固たる決意を持って進めば、どんな逆境も次の飛躍の土台になるというのだ。
「困難=チャンス」に変える3つの実践法
1. まず「困った」と言わない
口にした瞬間、脳が「自分は弱者だ」と認識してしまう。
代わりに、「これは伸びしろだ」「試されている」と言い換える。
2. 身体の力を抜く
緊張したときほど、深呼吸して姿勢を整える。
心が柔らかくなれば、思考も柔軟になる。
3. 次の一歩を“宣言”する
不安を抱いたままでもいい。「明日までに●●をやる」と具体的に決める。
小さな行動が、停滞を打ち破るエネルギーになる。
私自身の体験――「困った」を“肥やし”に変えられたチャンスがあったのに・・・
経営を続けていると、何度も「もう駄目だ」と思う局面がある。
そのたびに私は「困った、困った」と口にしていた。
だが今振り返れば、一の苦労を自分で五にも十にもふくらませていたようなものだった。
「困った」と思い込むことで、自らを追い込んでいたのだ。
もしあの頃、松下幸之助氏の言う「困っても困らない心」を持っていたなら、もっと早く次の道が開けていたに違いない。
「困難」は、あなたの伸びしろである
困難とは、あなたを試し、成長させようとする“装置”である。
心が固くなれば、それはただの壁に見える。
心を柔らかく保てば、それは成長への階段に変わる。
だからこそ、困難に直面したときにはこう唱えてほしい。
「今こそ、成長のチャンスだ」
その瞬間、あなたの中のエネルギーが再び動き出す。
そして、「困っても困らない」人だけが、本当に強く、しなやかに生き抜いていけるのだ。