『道をひらく』(松下幸之助著)を読む56
困難にぶつかったときに:「忍耐の徳」
松下幸之助氏は、仕事でも人生でも成功をつかむために欠かせない力として 「忍耐」 を挙げている。
そして、その忍耐が“現代人には決定的に欠けている”と警鐘を鳴らす。
もちろん、これは昭和の時代に語られた言葉だ。
しかし内容は、スマホとSNSに囲まれ「即効性」に慣れきった今の私たちに、より鋭く突き刺さる。
ちょっと壁にぶつかるだけで心が折れる人たち
松下氏は、「志と違う状況に直面すると、気迫を失い、努力する前に他人へ責任を押しつけてしまう」と述べている。
たとえば商売で物が売れないとき――
・“世間が悪い”
・“景気が悪い”
・“競合が手ごわい”
そんなふうに、原因を外に求める人は多い。
しかし本来考えるべきは、「自分が提供している商品やサービスは、本当に顧客の心を動かすレベルに達しているのか」という一点だ。
どれだけ言い訳をしても、世間は冷静である。
喜んで買いたいと思えるレベルに達していなければ、どんな商品も売れない。
まず“自らを省みる”ことから、真の実力が育っていく
松下幸之助氏は、車の「心棒(しんぼう)」を引き合いに出しながらこう語る。
車の心棒がしっかりしていなければ、どんな立派な車輪でも前に進めない。
同じように、人間の中心には“辛抱”がなければならない。
つまり、忍耐は“能力そのもの”を支える基礎であり、どれだけ優れたスキルを持っていても、忍耐がなければ成果はついてこない。
私自身の反省:答えを急ぎ過ぎていた
私自身を振り返ってみると、まさに松下氏の指摘通りの部分があった。
・すぐに結果が出ないと落ち着かなくなる
・答えを急ぐあまり、熟考すべき問題を浅く判断してしまう
・「切れ者の経営者」と見られたいという見栄が働く
そんな状態では、足元を固めた経営などできるはずがない。
むしろ、うまくいっていない時こそ、人に責任を求めず、自分の中に原因を探す。
この姿勢こそが、成長の土台となる。
忍耐とは、“自分を磨く時間”を受け入れる力なのだ。
成功とは「最後の一歩」を踏み込んだ人にだけ訪れる
人間誰しも「もうダメだ」と思う瞬間はある。
大切なのは、その瞬間に “あと一歩踏ん張れるかどうか” である。
実際、成功と失敗の境界線は紙一重だ。
ほとんどの人は、あと少しで成果が出るところで諦めてしまう。
松下氏は、だからこそ忍耐を“美徳”と呼んだのだ。
「もうひと踏ん張り」
この一歩こそが、他の誰とも違う自分をつくる。