『道をひらく』(松下幸之助著)を読む52
「守られた幸福」は本当の幸福か
松下幸之助氏は、こんな問いを投げかけています。
「動物園の動物は、本当に幸せだろうか?」
彼らは食べ物の心配もなく、外敵に襲われることもない。
それでも――檻の中で生きる彼らの姿に、私たちはどこか“力強さの欠如”を感じるのではないでしょうか。
同じことは、人間にも言えます。
安全で、快適で、何の苦労もない生活。
それは一見「理想」に見えますが、果たしてそこに“生きる実感”はあるでしょうか。
松下氏は、この「ぬるま湯的な安楽」を鋭く見抜いていました。
苦しみや困難を避け続ける人生からは、決して真の強さも、成長も生まれない。
人間は、試練に立ち向かう中でこそ、魂を磨き、誇りを得る存在なのです。
苦しみの中で見えた“自分の歴史”
私自身、経営者として何度も壁にぶつかってきました。
資金繰りに悩み、社員の将来を背負い、眠れぬ夜を過ごした日々。
その渦中にいたときは、「早く楽になりたい」と何度も思いました。
しかし、今振り返ってみると――あの苦しい時期こそが、自分を成長させた時間だったと心から思えるのです。
あの苦労があったからこそ、今の自分がある。
逃げずに立ち向かったその経験こそが、私の「生きた証」となりました。
困難は「人生の岐路」そのもの
松下幸之助氏は、人生の困難を“避けるべきもの”ではなく、“選ぶべき道”として見ていました。
「苦しみの中にこそ、道がある。」
私たちは苦境に立たされたとき、往々にして「不運だ」と感じてしまいます。
しかし、その瞬間こそが、実は人生の岐路なのです。
逃げるか、立ち向かうか。
この選択が、あなたの人生を決定づける。
松下氏の言葉に導かれるように、私は今こう思うのです。
困難に出会った瞬間こそ、「いま、自分は岐路に立っている」と自覚すべきだ。
そして、その先には必ず“充実した人生”が待っている。
「安全」ではなく「成長」を選べ
現代のビジネス環境は、効率化・自動化・リスク回避が進み、「安全に成功する」ことが美徳のように語られます。
しかし、松下氏が教えてくれるのは、その逆です。
危険や不安を避けて生きるのではなく、
それらに向き合うことでしか、人間も企業も真の力を得られない。
経営とは、挑戦と苦闘の連続。
社員もリーダーも、その中でこそ“人間としての格”が磨かれるのです。
若きビジネスマンへの問い
• あなたは、いま「ぬるま湯」に浸かっていませんか?
• 苦しみを避けることで、大切な成長の機会を逃していませんか?
• 今の困難は、実は「人生があなたに課した問い」ではないですか?
松下幸之助氏が伝えたかったのは、困難は敵ではなく、あなたを磨く“鍛錬の場”だということ。
困難に出会ったときこそ、自分を信じ、岐路を選び取れ。
それが、松下幸之助氏のいう「道をひらく」ということに通じているのです。