「守られた幸福」は本当の幸福か
松下幸之助氏は、こんな問いを投げかけています。
「動物園の動物は、本当に幸せだろうか?」
彼らは食べ物の心配もなく、外敵に襲われることもない。
それでも――檻の中で生きる彼らの姿に、私たちはどこか“力強さの欠如”を感じるのではないでしょうか。
同じことは、人間にも言えます。
安全で、快適で、何の苦労もない生活。
それは一見「理想」に見えますが、果たしてそこに“生きる実感”はあるでしょうか。
松下氏は、この「ぬるま湯的な安楽」を鋭く見抜いていました。
苦しみや困難を避け続ける人生からは、決して真の強さも、成長も生まれない。
人間は、試練に立ち向かう中でこそ、魂を磨き、誇りを得る存在なのです。

苦しみの中で見えた“自分の歴史”
私自身、経営者として何度も壁にぶつかってきました。
資金繰りに悩み、社員の将来を背負い、眠れぬ夜を過ごした日々。
その渦中にいたときは、「早く楽になりたい」と何度も思いました。
しかし、今振り返ってみると――あの苦しい時期こそが、自分を成長させた時間だったと心から思えるのです。
あの苦労があったからこそ、今の自分がある。
逃げずに立ち向かったその経験こそが、私の「生きた証」となりました。

困難は「人生の岐路」そのもの
松下幸之助氏は、人生の困難を“避けるべきもの”ではなく、“選ぶべき道”として見ていました。
「苦しみの中にこそ、道がある。」
私たちは苦境に立たされたとき、往々にして「不運だ」と感じてしまいます。
しかし、その瞬間こそが、実は人生の岐路なのです。
逃げるか、立ち向かうか。
この選択が、あなたの人生を決定づける。
松下氏の言葉に導かれるように、私は今こう思うのです。
困難に出会った瞬間こそ、「いま、自分は岐路に立っている」と自覚すべきだ。
そして、その先には必ず“充実した人生”が待っている。

「安全」ではなく「成長」を選べ
現代のビジネス環境は、効率化・自動化・リスク回避が進み、「安全に成功する」ことが美徳のように語られます。
しかし、松下氏が教えてくれるのは、その逆です。
危険や不安を避けて生きるのではなく、
それらに向き合うことでしか、人間も企業も真の力を得られない。
経営とは、挑戦と苦闘の連続。
社員もリーダーも、その中でこそ“人間としての格”が磨かれるのです。

若きビジネスマンへの問い
•    あなたは、いま「ぬるま湯」に浸かっていませんか?
•    苦しみを避けることで、大切な成長の機会を逃していませんか?
•    今の困難は、実は「人生があなたに課した問い」ではないですか?

松下幸之助氏が伝えたかったのは、困難は敵ではなく、あなたを磨く“鍛錬の場”だということ。
困難に出会ったときこそ、自分を信じ、岐路を選び取れ。
それが、松下幸之助氏のいう「道をひらく」ということに通じているのです。

⇦「『道をひらく』(松下幸之助著)を読む51」


弊社へのご連絡は「お問い合わせ」メールをご利用ください。