『道をひらく』(松下幸之助著)を読む26
ともによりよく生きるために:「あいさつをかわす」
あいさつは、子どもでもできる最もシンプルなコミュニケーションです。
しかし、松下幸之助氏は、この基本的な習慣こそが、組織や人間関係の土台になると考えていました。
例えば、朝、会社に出社したとき。
社員同士が「おはようございます」と声を掛け合うだけで、その場の空気が明るくなります。
昨日遅くまで残業をしていた同僚には、「昨日は遅くまでお疲れ様でした」と労いの言葉を添える。
このほんの一言が、職場の雰囲気を和らげ、一日の仕事を気持ちよくスタートさせるのです。
さらに、笑顔を加えたあいさつであれば、相手に与える印象はより一層良くなります。
『たった一人のあいさつが変えた営業所』
ある営業所での話です。
そこは長い間業績が振るわず、社内の雰囲気もどんよりしていました。
そんな中、明るく元気にあいさつをする女性が新しく配属されました。
彼女は電話を取るたびに「いつもありがとうございます!」と明るく対応し、誰に対しても朗らかにあいさつを交わしていたのです。
最初は彼女一人だけだったその「明るいあいさつ」ですが、やがて周囲にも広がっていきました。
すると、営業所全体の空気が変わり、自然と社員たちの士気も高まり、業績がみるみる向上していったのです。
ただ「あいさつをする」、それだけのことが、職場の雰囲気を一変させ、結果的に会社の業績まで向上させたのです。
この話は、あいさつの持つ力の大きさを物語っています。
『先にあいさつをする人が、組織の空気をつくる』
私自身、仕事に集中しすぎて社員があいさつをしてくれていることに気づかないことがありました。
目上の立場にいるとはいえ、これほど失礼なことはありません。
「あいさつは、相手からされるのを待つのではなく、自分からするもの」
この意識を持つだけで、人間関係は格段に良くなります。
特に上に立つ人間ほど、先にあいさつをする姿勢を持つべきです。
どんな仕事であれ、人と関わる限り、あいさつという「潤滑油」が欠かせません。
職場の雰囲気が悪い、チームワークがうまくいかない、社員が元気がない、そうした悩みを持つ経営者やリーダーこそ、まず「自分からあいさつをする」ことを意識してみてください。
明るく元気なあいさつが交わされる職場には、自然と活気が生まれます。
人間関係がギスギスすることなく、スムーズなコミュニケーションが生まれ、仕事の成果にもつながるのです。
たった一言のあいさつが、組織の未来を変えるかもしれません。
ぜひ、あなたの職場でも「先にあいさつする文化」を育ててみてください。