運命を切り開くために:「生と死」

松下幸之助氏は、こう語っています。
「人生とは、一日一日が、いわば死への旅路である」
一見すると重い言葉ですが、その奥には、人生の本質を見極めるための深いメッセージが込められています。
それは、すべての人が例外なく「死」に向かって生きているという厳然たる事実を受け入れ、限りある人生をどう生きるべきかを真剣に問い直すこと。
人は誰しも、
•    いつか必ず死を迎える
•    そのタイミングは誰にもわからない
•    人生は一度きりである
この普遍的な真理を心に刻んだとき、はじめて「今をどう生きるか」という問いに真正面から向き合うことができます。
本当に価値ある人生とは、未来を恐れることなく、今この瞬間を充実させる生き方なのです。

『「死」という宿命が教えてくれること』
生きとし生けるものは、その誕生と同時に、やがて終焉を迎える宿命を持っています。
それは宇宙の法則であり、私たちはそれを変えることはできません。
しかし、もし誰もが「自分もいつか死ぬ」という事実を強く意識できたなら、
•    他者との争いに囚われることが、いかに無意味なことか
•    自分のエゴや執着が、いかに小さなものか
•    もっと分かち合い、助け合って生きることの大切さ
これらに気づくはずです。
松下氏の問いかけは、単なる哲学ではありません。
それは、「なぜ人は互いに理解し合い、協力し合って生きられないのか?」という、現実社会への強烈なメッセージなのです。
目先の欲望やプライドに振り回される私たちに、もっと広い視野で人生を捉えるべきだと、静かに諭しているのではないでしょうか。

『「生」を全うすることが、最高の「死の準備」になる』
松下氏は、私たちに「死生観」を持つことの重要性を説いています。
なぜなら、「死」を意識することこそが、「生」を最大限に輝かせることにつながるからです。
•    どんな人生を生きたいのか
•    何を大切にし、何を遺すべきなのか
こうした問いを持つことが、本当の意味での「死を準備する」ということなのです。
ただし、松下氏はその答えを具体的に示すことはしません。
むしろ、「宿命を直視しつつ、厳粛に、しかも楽しみながら考えること」を勧めています。
これは、決して悲観するのではなく、「死」を意識しながらも前向きに生きることが大切だというメッセージなのでしょう。

『「楽しみつつ生きる」ことの意味』
松下氏の言葉の中に「楽しみつつ」という表現があります。
これは、ただ気楽に生きろという意味ではありません。
それは、「希望とともに生きる力を持て」ということ。
宿命を受け入れながらも、明日を信じ、前進し続けること。
その穏やかで力強い心構えが、一日一日を貴重なものとし、私たちを「死」だけでなく「生」に対する深い感謝で満たしてくれるのです。
「死を恐れる」のではなく、「生を充実させる」
これこそが、運命を切り開くための究極の心構えなのかもしれません。

「『道をひらく』(松下幸之助 著)を読む 13」➩

⇦「『道をひらく』(松下幸之助 著)を読む 11」


弊社へのご連絡は「お問い合わせ」メールをご利用ください。