『道をひらく』(松下幸之助 著)を読む 10
運命を切り開くために:「是非善悪以前」
「是非善悪以前」・・・この言葉は、一見すると難解に感じるかもしれません。
しかし、その本質を理解すれば、私たちの人生やビジネスにおいて、非常に大切な指針となる考え方です。
松下幸之助氏は、この言葉を通じて「良し悪しを超えた運命の力」に焦点を当てています。
「人間の力でできるのは、ほんの10%程度」・・・これは松下氏の言葉です。
たとえば、算数が得意な人、手先が器用な人、スポーツの才能を持つ人、こうした能力は本人の努力の結果ではなく、天から与えられた「ギフト」にすぎないというのです。
私たちは、持って生まれたものを誇るべきではなく、「与えられたものに感謝し、活かすことが大切だ」という教えなのです。
一方で、器用でない人や、体が弱い人も、それは決して「努力不足」や「能力の欠如」ではなく、与えられた運命の一部にすぎない。
この視点に立てば、「自分の得意なことに慢心せず、失敗しても過度に落ち込まない」姿勢が自然と身についてきます。
『成功も失敗も「運命の一部」』
私自身、経営者として四半世紀以上も会社を経営してきました。
振り返ると、その成功は「運が良かっただけ」という思いが強くあります。
特別な才能があったわけでもなく、何か画期的な戦略を生み出したわけでもない。
ただ、天から与えられた「ギフト」を活かせる環境に恵まれ、流れに乗ることができただけなのです。
このような視点を持つと、ビジネスの世界でも冷静に、そして謙虚に生きていくことができるようになります。
成功しても「自分の力だ」と思わない。
失敗しても「すべてが自分の責任」だと過度に背負わない。
すべては運命の流れの一部だと受け入れ、淡々と努力を続ける。
その積み重ねが、結果として人生を切り開く力となるのです。
『「授かりもの」としての人生』
さらに言えば、努力を積み重ねられること自体が、すでに天から与えられた「ギフト」なのかもしれません。
努力ができる環境、支えてくれる人々、健康な身体、そのすべてが、私たち自身の手で得たものではなく、授かったものなのです。
そう考えたとき、私たちは「生まれたこと」「生きていること」そのものに、深い感謝を抱かざるを得ません。
どんな境遇であれ、それは運命の一部として与えられたもの。
それをどう活かし、どう磨いていくかが、私たちの果たすべき使命なのです。
『「是非善悪以前」に立ち返るとき』
現代のビジネス社会では、スピードと成果が常に求められます。
しかし、そんな環境であるからこそ「是非善悪以前」の境地に立ち返ることが必要なのではないでしょうか。
良いことも悪いことも、すべては運命の流れの一部。
だからこそ、冷静に、謙虚に、そして淡々と目の前のことに向き合う。
この考え方を持つことで、どんな状況でも動じず、強くしなやかに生きることができるようになります。
また、それこそが「運命を切り開く」最大の力なのかもしれません。
焦ることなく、自分のペースで進んでいく。
そして、与えられたものを精一杯活かしながら、感謝の気持ちを持って生きる。
それが、松下幸之助氏が説く「是非善悪以前」の真髄なのです。