『道をひらく』(松下幸之助 著)を読む 07
運命を切り開くために:「さまざま」
松下幸之助氏は、自然の多様性に深く感銘を受け、「さまざまな花が咲き、草木が萌え、鳥が舞う」ことこそ自然の装いと語っています。
確かに、もし「花は桜だけ、木は杉だけ、鳥はウグイスだけ」だったら、自然の魅力も半減しますよね。
自然というのは、よく考えるとまさに多様性の宝庫。
改めて見ると、桜ひとつとっても、山に咲くもの、庭に咲くもの、去年咲いたもの、今年咲いたもの、すべて違います。
それを考えると、私たち人間もまさにその一部で、顔も違えば性格も、好みもバラバラ。
それが面白さを生み出しているんです。
幸之助氏が説いたのは、まさにこの自然の法則を人間にも当てはめるべきだということです。
わが社を見回しても、社員たちの個性は実に多様。
全員が同じコンサルティング業務に携わっていますが、個々の得意分野や性格は千差万別。
ここでのポイントは、わが社のような中小企業では、完全な分業は難しいということ。
全員がマルチタスクをこなせるスキルを持ってもらわなければならないのが現実です。
少人数で効率的に会社を回すためには、社員がどんなテーマでも対応できるようになってもらう必要があります。
とはいえ、そこに大きな壁があるのも事実。
人はそれぞれ得意な分野が違い、同じやり方で育てても、全員が同じ成果を出すわけではありません。
では、どうすればよいか?
その答えは、個性を無視しない育て方です。
試行錯誤の末に見つけた秘訣は「徹底的に個性を生かす」という方向で育成することでした。
個性を無視した育成は、社員が力を発揮できず、スキルも伸びませんし、本人にとっても幸せではありません。
個性とは、その人が自然に大きな力を発揮できる方向性を示すものです。それを活かさない手はありません。
このように多様な個性を持つ社員がそれぞれの力を最大限に発揮し、高いレベルの仕事をこなしてこそ、会社は発展していきます。
松下幸之助氏が重視していた「人間教育を基盤とした経営」は、まさに自然の理に沿ったものであり、私が偶然たどり着いた育成方法も、彼の教えに近いものがありました。
自然界の法則は、経営においても通じるのです。
個性を尊重し、多様な力を引き出すことで、企業も、社員も、共に豊かに成長する。
それこそが、私が自然と共に学んだ経営の真髄だったと思います。