『道をひらく』(松下幸之助 著) を読む 03
運命を切り開くために:「素直に生きる」
人は「謙虚な態度」で生き、「素直な心」を持つことが大切だと教えられています。
「素直さ」を失うと、逆境では卑屈になり、順境では自惚れてしまいます。
松下幸之助氏は、逆境を試練として受け止め、順境も含めて素直に自分の運命として受け入れることで、人生は大きく切り開かれていくと述べています。
振り返ると、私の人生でも、特に逆境が思い出されます。
経営を引き継いだ当初、会社は売上が低迷し、資金繰りは厳しく、銀行からの借入金返済が大きな負担になっていました。
経営経験のなかった私にとって、それはまさに人生で最も厳しい状況でした。
私は、赤字部門の整理や人員の再配置、新事業の立ち上げ、生産性向上、内製化によるコスト削減、さらには経営陣の報酬カットまで、できる限りの手を尽くしました。
それでも夜中に資金繰りのことが頭をよぎり、不安で眠れない日々が続きました。
運命を恨み、愚痴をこぼし、弱音を吐きながらもがいていました。
しかし、もしその時「これが自分に与えられた道だ」と素直に受け入れていたならば、もっと冷静に対処でき、精神的にも楽だったかもしれません。
とはいえ、この大逆境を通じて、私は経営者として大きく成長することができました。
髪は真っ白になり、体もやつれましたが、数年後にはなんとか危機を乗り越えることができました。
素直な生き方とは、人が本来持っている力、さらにはそれ以上の力を発揮させてくれるものだと、改めて実感しています。
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