『道をひらく』(松下幸之助著)を読む81 【事業をよりよく伸ばすために】:「商売の尊さ」
【事業をよりよく伸ばすために】:「商売の尊さ」
■宗教は、人を救う営みである
松下幸之助氏は宗教の力を高く評価していました。
それはなぜか、宗教が、人の苦しみや迷いを和らげ、生きる希望を与える力を持っているからです。
人は誰しも、人生の中で迷い、悩み、苦しみます。
病気、貧困、人間関係、将来への不安、そうした困難の中で心を支え、前を向く力を与える。
それが宗教の果たしてきた大きな役割です。
松下氏は、この「人を救う」という働きに深い尊さを見ていました。
そして、その視点を商売にも重ねているのです。
■商売もまた、人に喜びを届ける仕事である
商売とは、単に物を売って利益を得る行為ではありません。
人々の暮らしを便利にする、生活を豊かにする、不便を解消し、安心を届ける、そのために商品やサービスを提供することです。
つまり商売とは、人々の役に立ち、喜びを届ける営みなのです。
この点において、松下氏は宗教と商売には共通するものがあると説いています。
どちらも、人のために尽くす、そして、その価値に対して感謝が返ってくる。
宗教には信頼と敬意が寄進や浄財となって集まり、商売には正当な対価が集まる、本質は同じです。
■利益は「社会からの通知表」である
ここに、商売を考えるうえで極めて重要な視点があります。
それは、利益とは単なるお金ではなく、「社会からの評価」だということです。
もし十分な利益が得られないとしたら、それは社会に価値が届いていない可能性が高い。
もちろん、一時的な景気や環境要因もあります。
しかし長い目で見れば、正当に喜ばれる仕事には必ず対価が伴います。
逆に言えば、報酬が伴わないときには、自らの商売を見つめ直す必要があります。
本当にお客様の役に立っているか、独りよがりになっていないか、求められている価値を提供できているか、そこを厳しく問い直さなければなりません。
■商売に卑しさはない
日本では時に、「金儲け」という言葉にどこか後ろめたい響きがつきまといます。
しかし松下幸之助氏は、その見方をきっぱりと否定しています。
人々に価値を届け、その結果として利益を得る、これは極めて尊い営みです。
むしろ、社会に必要とされる価値を生み出し続けることこそ、商売人の使命です。
利益を上げることは、決して恥ずべきことではありません。
それは社会に貢献した証なのです。
■商売の原点に立ち返る
商売がうまくいかないとき、多くの人は価格や広告、競争相手ばかりを気にします。
しかし本当に問うべきなのは、もっと根本的なことです。
「自分たちは、誰を、どう喜ばせているのか」
この問いに明確に答えられなければ、商売は必ず迷走します。
商売とは、人のために尽くすこと、その結果として、正当な報酬をいただくこと、この原点を忘れなければ、道を誤ることはありません。
■尊い仕事だという誇りを持つ
松下幸之助氏が伝えたかったのは、商売への誇りです。
商売は決して卑しいものではない。
人々の暮らしを支え、社会を豊かにする尊い仕事である。
そうした自覚を持ったとき、仕事への向き合い方は大きく変わります。
目先の利益に振り回されなくなる、お客様への姿勢が変わる、提供する価値の質が高まる、そしてその結果として、利益もまた自然についてくる。
商売の尊さを深く理解すること、それこそが、事業を真に伸ばす第一歩なのです。