【事業をよりよく伸ばすために】:「大事なこと」

■勝つことより、どう勝つかが問われる
松下幸之助氏は、事業の本質を語るうえで、相撲を例に挙げています。
どれほど強い力士でも、その勝ち方が姑息であったり、正々堂々としていなかったりすれば、人々は心から称賛しません。
たとえ勝利しても、ファンは失望し、その人気はいずれ失われていきます。
これは事業においても全く同じです。
成果を上げることはもちろん大切です。
利益を生み、会社を成長させることは、経営者に課せられた重要な使命です。
しかし、それ以上に問われるのは、「どうやってその成果を上げたか」ということです。
勝敗だけではなく、その内容が問われる、そこに事業の品格があります。

■成功なら何をしてもいい、は誤りである
事業の世界では、ともすれば結果だけが注目されます。
売上が伸びた、利益が増えた、市場シェアを拡大した、数字だけを見れば、それは確かに成功でしょう。
しかし、その裏側で社員に過度な負担を強いていたらどうでしょうか、取引先に無理を押しつけていたらどうでしょうか、あるいは顧客に十分な価値を提供せず、巧みな販売手法だけで利益を上げていたとしたらどうでしょう。
それは真の成功ではありません。
松下氏が言うように、事業には「勝ち方」があるのです。
正しい方法で得た成果でなければ、その繁栄は長続きしません。

■事業とは、関わるすべての人を幸せにする営みである
本当に優れた事業とは、一部の人だけが潤うものではありません。
顧客が満足する、社員が誇りを持って働ける、取引先が適正な利益を得る、社会に価値が還元される、このすべてが揃って、初めて健全な事業といえます。
誰かの犠牲の上に成り立つ成長は、いずれ必ず歪みを生みます。
社員の給与を不当に抑えて利益を出す、下請け企業に無理な条件を押しつける、販売先を圧迫して自社だけが利益を確保する、こうしたやり方は、一時的に数字を押し上げるかもしれません。
しかし、それは砂上の楼閣であり、信頼を失った事業は、必ず崩れます。

■正しい道は遠回りに見えて、最短である
松下幸之助氏は、この理想を実現することが簡単ではないと認めています。
短期的な成果を追えば、不公正な手段に頼りたくなる誘惑は常にあります。
しかし、だからといって安易な道を選んではならない。
難しいからこそ挑む価値がある、困難だからこそ、それを乗り越えた先に本物の繁栄がある、これは事業だけでなく、あらゆる仕事に通じる真理です。
正しい道は、一見すると遠回りに見えます。
けれども長い目で見れば、それこそが最短の道なのです。

■信頼こそ、最大の資産である
私自身、経営を始めた当初は、目の前の課題を乗り越えることで精一杯でした。
正しいやり方とは何か、すべての関係者にとって最善とは何か、そこまで深く考える余裕は、正直なかったと思います。
それでも結果として、社員に無理を強いず、取引先に理不尽を押しつけず、誠実に事業を続けてこられたことは、大きな意味がありました。
時間はかかりましたが、その積み重ねが信頼を生み、今日まで事業を支えてくれたのだと思います。
事業を支える最大の資産は、設備でも資金でもありません、信頼です。

■事業の「中身」を問い続ける
松下幸之助氏がここで伝えたかったのは、事業の結果だけを見るな、ということです。
どんな方法でそこへ至ったのか、その過程は正しかったのか、関わる人々を幸せにしているか、この問いを持ち続けることが、事業をより良く伸ばすために欠かせません。
利益を追うことは大事です。
しかし、それ以上に大事なのは、その利益がどのように生まれたかです。
正々堂々と勝つこと、それこそが、長く繁栄する事業に共通する、最も大事な条件なのです。

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