『道をひらく』(松下幸之助著)を読む88 【事業をよりよく伸ばすために】:「熱意を持って」
【事業をよりよく伸ばすために】:「熱意を持って」
■経営に「これで十分」はない
松下幸之助氏は、経営や仕事には無限のやり方があると語っています。
経営の神様とまで称された松下氏ほどの人物が、なお「経営とは不思議なものだ」と述べている。
この言葉には、非常に重い意味があります。
長年にわたり経営の第一線に立ち、数えきれないほどの成功と失敗を重ねてきた人でさえ、なお経営には底知れぬ深さがあり、限りない可能性があると感じていたのです。
これは、私たちに明確な示唆を与えてくれます。
どれほど経験を積んでも、「もうやり尽くした」「これ以上の工夫はない」と考えた瞬間に成長は止まるということです。
経営にも仕事にも、完成という終着点はありません。
常に改善の余地があり、新たな道が開かれています。
■可能性を見つけるのは熱意である
では、その無限の可能性をどうすれば見出せるのでしょうか。
松下氏は、その答えをきっぱり示しています。
それは「熱意」です。
どれほど優れた環境があり、どれほど豊かな知識があっても、そこに熱意がなければ新しい発想は生まれません。
人は「これでいい」と思った瞬間、考えることをやめます、そして考えることをやめたところで、進歩も止まります。
反対に、「もっと良くしたい」「何とか突破したい」という強い思いがあれば、人は自然に知恵を絞り始めます、工夫が生まれます、これまで見えなかった可能性が見えてきます。
熱意とは、可能性の扉を開く鍵なのです。
■熱意が新しい道をつくる
松下氏は、非常にわかりやすい例を挙げています。
「どうしても二階に上がりたい」、その強い思いがあったからこそ、人ははしごを思いつき、やがて階段をつくり出しました。
もし「一階で十分だ」と思っていたなら、はしごという発想すら生まれなかったでしょう。
これは経営もまったく同じです。
「現状で十分」と考えた企業に革新は起きません。
「もっと良くできるはずだ」と本気で願う企業だけが、新しい方法を見つけ出します。
天才が革新を生むのではありません、熱意が革新を生むのです。
この視点は極めて重要です。
何かを成し遂げるのに、最初から特別な才能は必要ありません。
必要なのは、「何としてでも実現したい」という切実な思いなのです。
■熱意が仕事を変え、経営を変える
仕事も経営も、日々の繰り返しの中で惰性に流されやすいものです。
慣れが生まれると、「こんなものだろう」「これで十分だろう」と無意識に線を引いてしまいます。
しかし、その瞬間から進歩は止まります。
本当に成長する人、伸びる会社は違います。
現状に満足せず、「もっと改善できる」「もっと価値を提供できる」と考え続けます。
そしてその探究を支えているのが熱意です。
熱意のあるところに創意工夫が生まれ、創意工夫のあるところに発展があります。
経営とは、まさにこの連続なのです。
■いまからでも遅くない
私自身、経営に携わってきた中で、松下氏がおっしゃるほどの熱意を持ち続けられていたかと問われれば、率直に言って反省するところがあります。
もっと若い頃から、もっと深く考え抜き、もっと強い執念を持って取り組んでいたなら、違った景色が見えていたかもしれません。
しかし、大事なのは過去を悔やむことではありません。
気づいたときが、新たな出発点です。
「もう十分やった」ではなく、「まだできることがある」と考える、その姿勢さえあれば、いつからでも挑戦は始められます。
経営にも仕事にも、終わりはありません。
可能性は常に目の前にあります。
だからこそ私たちは、あらためて熱意を持たなければなりません。
熱意をもって考え、熱意をもって工夫し、熱意をもって行動する、その積み重ねだけが、仕事を進化させ、事業をよりよく伸ばしていくのです。