『道をひらく』(松下幸之助著)を読む90 【事業をよりよく伸ばすために】:「同じ金でも」
【事業をよりよく伸ばすために】:「同じ金でも」
■お金には「重み」がある
松下幸之助氏は、お金の価値は額面だけでは決まらない、と説いています。
同じ一万円でも、他人から気軽にもらったお金と、自ら汗を流して得たお金とでは、その重みがまったく違うのです。
苦労して稼いだお金には、その背景に時間と労力、知恵と責任が宿っています。
だからこそ使うときにも慎重になり、「どう生かすか」を真剣に考えるようになる。
そこに、お金本来の価値が光るのです。
■お金は「天下の回りもの」である
松下氏はまた、「お金は天下の回りもの」とも語っています。
たとえ自分が稼いだお金であっても、それは社会の中を巡る大切な資源であり、一時的に自分が預かっているにすぎません。
だからこそ、無駄に使ったり、安易に扱ったりすることは許されない。
お金をどう使うかには、その人の見識と品格が表れます。
生きた使い方をすることこそ、社会人としての責任なのです。
■借りたお金は、心を鈍らせる
さらに松下氏は、個人でも企業でも、安易に借金に頼るべきではないと明言しています。
借り入れをすると、一時的には安心感が生まれます。
資金が手元にあることで、ひと息つけたような気になるからです。
しかし、その安心は錯覚です。
借りたお金は必ず返さなければならず、その瞬間から未来の自由を担保に差し出しているともいえます。
借金は、経営判断を鈍らせる危険をはらんでいます。
■無借金経営がもたらす軽やかさ
私自身、会社を引き継いだ当初は多くの借入を抱えていました。
資金繰りに追われる日々の中で、借金の重さが経営者の心にどれほど影を落とすかを痛感しました。
だからこそ、節約を徹底し、一つひとつ利益を積み重ね、十数年かけて完済しました。
無借金になったとき、経営は驚くほど軽やかになりました。
判断は明快になり、未来を前向きに描けるようになったのです。
■お金への姿勢が、経営の質を決める
お金は、単なる数字ではありません。
それは信用であり、責任であり、経営者の哲学そのものです。
安易に借りず、真剣に稼ぎ、丁寧に使う。
この当たり前を徹底できるかどうかが、事業の強さを決めます。
松下幸之助氏の教えは明快です。
お金を軽く見る者に、真に強い経営はできない。
お金を尊び、その価値を生かし切る者だけが、揺るぎない事業を築くことができるのです。