『道をひらく』(松下幸之助著)を読む74 【仕事をより向上させるために】:「つきまとう」
【仕事をより向上させるために】:「つきまとう」
■ 本当の仕事は「売ったあと」に始まる
多くの人は、仕事には終わりがあると思っている。
商品を納品した、契約を締結した、報告書を提出した、そこで「ひと仕事終えた」と考える。
もちろん、一区切りではある。
しかし、松下幸之助氏は、そこから先にこそ、本当の仕事があると説く。
その象徴的な言葉が、「つきまとう」である。
少々、強い表現だがそこには、仕事に対する並々ならぬ責任感が込められている。
■ 製品に「ついていく」という発想
松下氏は、自社の製品が売れたあとも、その製品についてお客様のもとへ行きたいと語る。
冷蔵庫なら台所へ、扇風機なら居間へ、海外に売れた製品なら、外国にまで。
もちろん、文字通り後をついていくわけではない。
これは比喩であるが、その比喩が示しているのは明確だ。
売ったあと、その商品がどう使われているのか、本当に役立っているのか、お客様は満足しているのか、そこまで知ろうとする執念である。
■ 売って終わりでは、仕事は育たない
商品でもサービスでも、提供した時点で終わりにしてしまえば、そこから先の学びは得られない。
お客様はどう感じたのか、どこに不便があったのか、どこに感動したのか、どこに不満が残ったのか、この情報がなければ、次の改善はできない。
つまり、売りっぱなしの仕事は成長しないのである。
仕事の質を高める人は、必ずその先を見ている。
■ 顧客の沈黙は、満足とは限らない
ここで注意したいのは、お客様が何も言わないからといって、満足しているとは限らないということだ。
不満があっても、わざわざ言わない人は多い。
黙って去っていく。
そして次回、別の会社を選ぶ。
これは恐ろしいことだ。
表面上は何も起きていない。
だが実際には、信頼が静かに失われている。
だからこそ、こちらから尋ねなければならない。
「使い心地はいかがですか」「ご不便はありませんか」「もっと改善できる点はありませんか」この一言が、未来を変える。
■ 「つきまとう」はマーケティングの原点
現代ではこれをマーケティング リサーチと呼ぶが、本質は同じだ。
お客様の声を聞き、改善し、次に生かすために行う活動である。
この循環こそ、仕事を磨く最良の方法である。
松下氏は、それをもっと人間味のある言葉で「つきまとう」と表現した。
そこに私は、仕事への深い愛情を感じる。
■ 私たちの仕事でも同じである
私の会社では、マーケティングリサーチを独自に進化させた、コンサルティングリサーチを行っている。
調査を実施し、報告書を提出するという形式だけ見れば、そこで業務完了だが、私たちはそこで終わらせない。
むしろそこからが重要だ。
結果をどう受け止めたか、どう活用したか、経営判断にどう結びついたか。
そこまで確認し、必要なら一緒に次の打ち手を考える。
調査は、届けることが目的ではなく、役立てていただいて初めて価値になる。
これはまさに、「つきまとう」姿勢そのものだと思っている。
■ しつこさではなく、誠実さ
「つきまとう」と聞くと、しつこい印象を持つかもしれない。
だが、それは押しつけではない。
相手のためを思い、よりよいものを届けたいと願う誠実さである。
本当に良い仕事をする人は、結果に無関心ではいられない。
届けたあとが気になる。
役立ったかどうかが気になる。
それは、責任感の証である。
■ 仕事は、届けたあとで評価される
どれほど立派な商品でも、どれほど緻密な企画でも、使われなければ意味がないし、役立たなければ価値がない。
仕事とは、作ることではない。
届けて、生かされて、初めて完成する。
そのためには、結果を追いかけることだ。
お客様のもとへ、心をついていかせることだ。
それが松下幸之助氏のいう「つきまとう」なのである。
そしてこの姿勢こそ、仕事を真に向上させる最も確かな道ではないだろうか。