【自主独立の信念をもつために】:「虫のいいこと」

■「自分だけは大丈夫」という甘えを捨てる

松下幸之助氏は、「虫のいいことを考えてはいけない」と戒めています。
ここでいう“虫のいいこと”とは、自然の理に反して、自分だけ都合よく物事が進むことを期待する姿勢です。
たとえば、雨が降れば誰もが濡れます。
それは自然の摂理です。
にもかかわらず、「自分だけは濡れたくない」と願う、何の備えもせず、ただ幸運を期待する、これこそが、虫のいい考え方だと松下氏は言うのです。
現実は、願望では変わりません、都合のよい期待にすがるだけでは、何も守れないのです。

■自然の流れには逆らえない
では、雨が降ったとき、どうすればよいのでしょうか。
答えは極めてシンプルです、傘をさせばいい。
雨を止ませようとする必要はありません。
自分だけ特別扱いされることを願う必要もありません。
自然の流れを受け入れ、その上で適切に備える、これが、物事に対する正しい向き合い方です。
人生も経営も同じです。
市場環境の変化、景気の波、予期せぬ困難、こうした現実をなくすことはできません。
重要なのは、それにどう備え、どう対応するかです。

■経営とは「傘を用意すること」である
経営者にとって、最も危険なのは「何とかなるだろう」という楽観です。
雨が降ってから慌てて傘を探しても遅い。
本当に必要なのは、降る前から備えておくことです。
資金繰りへの備え、市場変化への備え、人材不足への備え、危機管理への備え、こうした準備を怠らないことが、経営の基本です。
問題が起きないことを願うのではなく、起きたときに対応できる態勢を整えておくこと、それが、責任ある経営者の姿勢なのです。

■窮地には、必ず理由がある
私自身、経営の中で幾度となく厳しい局面に直面してきました。
そのたびに、「なぜこんなことになったのか」と嘆きたくなることもありました。
しかし振り返れば、多くの場合、その状況には必ず理由がありました。
準備不足だった、判断が甘かった、先を読む力が足りなかった、つまり、窮地とは偶然ではなく、何らかの必然の結果であることが多いのです。
それを嘆いても何も変わりません。
必要なのは、現実を受け止め、次に備えることです。

■順応する者だけが、生き残る
自然に逆らう者は、やがて無理が生じます。
しかし、自然の理を受け入れ、柔軟に順応する者は強い。
これは経営だけでなく、人生全般に通じる真理でしょう。
変化を拒むのではなく、変化を前提に備える、不運を嘆くのではなく、対策を講じる、その積み重ねが、自立した人間をつくります。

■「備え」が自主独立を支える
松下幸之助氏の教えは明快です。
虫のいい期待に頼るな、現実を直視し、備えよと。
自主独立とは、単に他人に頼らないことではありません。
どんな状況にも対応できる準備を、自ら整えることです。
雨は必ず降る、だからこそ、傘を持つ、この当たり前を徹底できる人だけが、困難に動じず、自らの人生と事業をしっかり支えていけるのです。

『道をひらく』(松下幸之助著)を読む95➩

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