『道をひらく』(松下幸之助著)を読む97 【自主独立の信念をもつために】:「あぐらをかく」
【自主独立の信念をもつために】:「あぐらをかく」
■地位は「休む権利」ではない
松下幸之助氏は、自分の地位や立場にあぐらをかき、本来果たすべき仕事を怠ることを厳しく戒めています。
人は立場が上がるほど、つい錯覚しがちです。
役職がつけば、自分は偉くなった、責任を果たすよりも、その地位に安住してよい、そんな意識が芽生えやすいのです。
しかし、それは完全な勘違いです。
地位とは、楽をするために与えられるものではありません。
むしろ、より大きな責任を担うために与えられるものです。
もしその立場にあぐらをかき、なすべき仕事を怠れば、その人は組織にとって単なる障害物になってしまいます。
そして、その停滞は会社全体に広がり、ひいては社会の発展をも妨げることになるのです。
■それぞれの立場に、それぞれの使命がある
松下氏が説くのは、「役割の自覚」です。
一般社員には一般社員の役割があり、管理職には管理職の役割がある、経営者には、経営者にしか果たせない使命があります。
どの立場が偉いという話ではありません。
それぞれが、自分に与えられた責任を全うすること、そこに組織の健全な協力関係が生まれます。
会社とは、誰か一人のために存在するものではありません。
社員一人ひとりが、それぞれの持ち場で力を尽くし、互いに支え合うことで、社会に価値を提供していく共同体です。
だからこそ、どんな立場にあっても「あぐらをかく」ことは許されないのです。
■上に立つほど、気の緩みを警戒しなければならない
私自身、経営に携わる中で感じることがあります。
立場が上がると、見える景色が変わります。
現場の課題もよく見える、部下の至らなさも目につく、すると、つい「自分のほうがわかっている」「自分のほうが優れている」と錯覚してしまう危険があります。
しかし、それは思い上がりです。
見える立場にいるなら、その見えたことを適切に活かせばいい。
指導し、支え、組織全体をよりよい方向へ導く、それが上に立つ者の仕事です。
決して、評論家のように眺めていることではありません。
■経営者こそ、自らを律し続けるべき
会社が軌道に乗り、利益が出始めると、誘惑も増えます。
収入が増え、時間に余裕ができれば、遊びや趣味に流れやすくなる。
もちろん、休息や息抜きは必要です。
しかし、それが本業への責任を曇らせるなら、本末転倒です。
幸い、私自身はそうした意味で「あぐらをかく」ことはありませんでした。
会社が安定するまでには長い時間がかかりましたし、安定したように見えても、経営には常に不確実さがつきまといます。
「いつ何が起こるかわからない」、その緊張感があったからこそ、気を緩めずにここまで歩んでこられたのだと思います。
■最後まで責任を果たす
松下幸之助氏の教えは明快です。
どれだけ立場が上がっても、どれだけ成功しても、決してそこに安住してはならない、仕事がある限り、責任がある限り、その使命を果たし続ける、それが、真に自主独立した人間の姿です。
あぐらをかいた瞬間、人の成長は止まります。
常に襟を正し、自らの役割を問い続ける、その姿勢こそが、組織を発展させ、社会に価値を生み続ける力になるのです。
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