ともによりよく生きるために:「真剣に叱られる」

叱ること、叱られることは、誰にとっても気持ちのいいものではない。
これは、松下幸之助氏も指摘している通りです。
たとえ自分に非があって叱られていると分かっていても、不快なものですし、叱る側もできれば避けたい。
しかし、もし誰からも叱られず、また誰も叱らないとしたらどうなるでしょうか?
松下氏は、「叱る」「叱られる」という関係がなくなれば、物事がうやむやになり、人の考え方や行動が甘くなり、結果として組織や社会の弱さやもろさが生まれる」と指摘しています。

『パワハラを恐れ、「叱ること」を避けていないか?』
近年、ビジネスの現場では「パワハラ(パワーハラスメント)」が大きな問題となっています。
そのため、部下を叱ることを躊躇する上司も増えているのではないでしょうか。
■「叱ることで、部下から反発されるのではないか?」
■「厳しく指導すると、パワハラと受け取られるのではないか?」
そんな不安から、本来必要な叱責を避けてしまい、問題をうやむやに済ませるケースもあるかもしれません。
私自身、部下を持ったとき、叱ることが苦手でした。
むしろ、新人時代に上司からパワハラまがいの叱責を受けていた頃のほうが、気が楽だったとすら思うことがあります。
しかし、もしも部下のミスによって会社に大きな損害が出たり、顧客に深刻な影響を与えたりするような事態が発生したら?
そのとき、上司としてどう対応すべきか?
答えは明確です。
「その場でしっかりと叱り、反省を促し、再発防止策を講じる」ことが不可欠なのです。

『「真剣に叱る」「真剣に叱られる」覚悟を持つ』
幸い、私の会社では社員が重大なミスを犯すことはほとんどありませんでした。
しかし、未来においても絶対に起こらないとは言い切れません。
だからこそ、いざというときは「私情に流されず、真剣に叱る」ことが必要です。
そして同時に、叱られる側の社員もまた、「真剣に叱られる覚悟」を持たなければなりません。
そのためには、日頃から上司と部下の人間関係が良好であること、そして会社の使命や価値観を共有していることが大切です。

『「叱る」「叱られる」を超えて、成長する組織へ』
不幸にも重大なミスが発生したとき、決して目を背けてはなりません。
大切なのは、「逃げずに向き合うこと」。
■叱る側は、私情を交えず、部下の成長を願って真剣に叱る。
■叱られる側は、言い訳せずに受け止め、次につなげる。
その覚悟をお互いが持てたとき、組織は一層強くなり、事業も発展していくのではないでしょうか。

「『道をひらく』(松下幸之助著)を読む33」➩

⇦「『道をひらく』(松下幸之助著)を読む31」


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