『道をひらく』(松下幸之助著)を読む124 【国の道をひらくために】:「わが事の思いで」
【国の道をひらくために】:「わが事の思いで」
■プロとアマを分けるもの
松下幸之助氏は、プロとアマチュアの違いを、漫才や落語を例に語っています。
同じ台本、同じ言葉を使っていても、プロが演じれば人を惹きつけ、素人が演じれば伝わらない。
この差は技術だけではありません。
その本質は、熱意、真剣さ、そして研究心の差にあります。
どれほど小さな舞台でも、「どうすればもっと良くなるか」を考え抜き、磨き続ける。
その積み重ねが、圧倒的な差を生むのです。
■政治も経営も、すべては心がけで決まる
これは芸の世界だけの話ではありません。
国家運営も、企業経営も、商店経営もまったく同じです。
国というのは、同じように国土、国民、資源などを持っていながら、繁栄する場合と衰退する場合がある。
同じような条件でも、成長する会社と停滞する会社がある。
その違いを生むのは、結局のところそれを担う人の姿勢です。
どれだけ真剣に向き合っているか。
どれだけ深く考え、研究し、責任を引き受けているか。
リーダーの熱意と覚悟が、その組織の未来を決めるのです。
■「自分には関係ない」が衰退を招く
しかし、多くの人は国のこととなると、どこか他人事として捉えがちです。
「政治は政治家がやるもの」「自分ひとりが考えても変わらない」、そうして無関心でいる間に、社会の方向は決まっていきます。
松下氏は、ここに警鐘を鳴らしています。
国のあり方は、一部の為政者だけが決めるものではありません。
国民一人ひとりが、自分自身の問題として考えなければならないのです。
■会社には口を出しても、国には無関心だった
振り返れば、私自身、会社のことには若い頃から強い関心を持っていました。
「もっと効率化できるのではないか」「こうすれば働きやすくなるのではないか」、そう考え、社長や幹部に意見を伝え、自ら動いたことも何度もあります。
けれども、国のことになるとどうだったか。
正直に言えば、長い間どこか無関心でした。
政治は遠い世界の話であり、自分には直接関係ないと思っていたのです。
しかし、それは誤りでした。
会社の経営が社員の暮らしを左右するように、国のあり方は私たち一人ひとりの生活基盤そのものを左右しています。
■「わが事」として考えるところから始まる
松下幸之助氏が伝えたかったのは、まさにここです。
国のことを、わが事として考える。
その意識なくして、真の民主主義も、持続的な繁栄もありません。
もちろん、誰もが政治家になる必要はありません。
けれども、社会の動きを知り、考え、意思を示すことはできる。
関心を持つこと、学ぶこと、判断すること、そして行動すること、それが主権者としての責任です。
■未来は、当事者意識の総和で決まる
会社も国も、誰か特別な人がつくるものではありません。
そこに関わる一人ひとりの「わが事の思い」が形づくっていくものです。
他人任せでは、何も良くなりません。
まずは自分の暮らしと国の未来がつながっていることを自覚すること。
そこから、すべてが始まります。
松下幸之助氏の言葉は、いまの時代だからこそ、より重く響きます。
私たち一人ひとりが当事者として考え、行動するときにこそ、この国の道はひらかれていくのです。