【国の道をひらくために】:「日本よい国」

■日本の価値を、私たちはもっと知るべきである
松下氏が語る日本の素晴らしさは、単なる愛国的感情ではありません。
そこには、冷静な観察と深い確信があります。
四季折々に表情を変える豊かな自然、長い年月をかけて育まれた風土、世界でも稀有な歴史の連続性、そして、勤勉で誠実な国民性、これらが重なり合って、日本という国の独自性を形づくっています。
氏は「こんなによい国は世界中どこにもない」とまで述べています。
それは決して大げさな賛辞ではなく、日本という国が持つかけがえのない価値への率直な評価なのでしょう。
しかし、どれほど素晴らしい国であっても、そこに生きる私たちがその価値を自覚していなければ意味がありません。
価値は、気づかれなければ存在しないのと同じです。
だからこそ松下氏は、日本のよさをもう一度見つめ直し、日本人としての誇りを取り戻そうと呼びかけているのです。

■日本は、世界でも稀有な歴史を持つ国である
日本という国の特異性は、その歴史にあります。
島国という地理的条件のもと、独自の文化を育みながら、長い時間をかけて社会を築いてきました。
もちろん、国内には戦乱もありました、権力争いもありました。
しかし、その中にあっても、日本は国家としての連続性を失うことなく歩み続けてきました。
とりわけ、長い歴史を通じて続いてきた統治の系譜は、世界的に見ても極めて稀です。
こうした歴史的な積み重ねが、日本人の精神性や価値観の土台を形づくってきたのだと思います。
礼節を重んじる心、清潔さを大切にする文化、調和を尊ぶ感覚、教育への高い意識、これらは一朝一夕に生まれたものではありません。
長い歴史の中で磨かれ、受け継がれてきた日本の財産です。

■誇りとは、過去を守ることではなく未来へつなぐこと
国を誇るとは、過去の栄光に浸ることではありません。
その価値を理解し、それをさらによい形で次の世代へ手渡すことです。
自然環境を守る、文化を育てる、社会の秩序を保つ、人を大切にする、こうした一つひとつの営みが、日本という国をよりよいものへと育てていきます。
壊すことは簡単です。
しかし、築くには長い時間がかかる。
だからこそ、私たちには守り育てる責任があります。
松下幸之助氏がこの章を通して訴えているのは、まさにその責任意識ではないでしょうか。

■外に出ると、日本のよさがよくわかる
私自身、海外で仕事をしたり、外国企業と関わったりする機会がありました。
そのたびに感じるのは、やはり日本のありがたさです。
日本語で仕事ができる、法制度が整っている、価値観を共有できる、互いの常識が通じる、こうした環境は、決して当たり前ではありません。
海外で生活し、働くことには大きな学びがあります。
それでも帰国したとき、心から「やはり日本はいい国だ」と感じるのです。
自分が育った風土、自分の感覚に自然に馴染む文化、安心して暮らせる社会、そこには、言葉では言い尽くせない安心感があります。
日本人にとって、日本で生きることには特別な意味がある、私はそう思っています。

■国を守るとは、日々の選択に責任を持つこと
この章で松下氏が語る「日本よい国」は、単なる感傷ではありません。
その背景には、「この国をどう守り、どう発展させるか」という強い問題意識があります。
だからこそ本章では、政治の重要性にも繰り返し触れられてきました。
国は自然に守られるものではありません。
そこに生きる国民一人ひとりの意思と行動によって支えられています。
政治に関心を持つ、社会の変化に目を向ける、未来世代を意識して判断する、こうした日々の選択の積み重ねが、国の未来をつくります。

■「日本よい国」を、現実のものにし続けるために
松下幸之助氏は、この国を深く愛していました。
だからこそ、その未来を憂い、私たちに問いかけたのです。
この素晴らしい国を、本当に次代へつないでいけるのか。
その問いは、今を生きる私たちにそのまま向けられています。
日本は、確かによい国です。
しかし、その「よさ」は放っておいて守られるものではありません。
価値を知り、誇りを持ち、行動すること。
それによってのみ、日本のよさは未来へ受け継がれていきます。
『道をひらく』の最後に松下幸之助氏がこのテーマを置いた意味は、極めて重い。
個人の生き方、企業のあり方、そして国家の未来。
それらすべての根底には、「自らの国をどう思うか」という問いがあるのだと思います。
長きにわたり『道をひらく』を読み進めてきましたが、その締めくくりにふさわしい、深い示唆に満ちた一章でした。
そして私自身も、あらためて思います。
この日本という国を大切にし、よりよい形で次の世代へ手渡していきたい、と。

『道をひらく』(松下幸之助著)を読む133➩

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