ともによりよく生きるために:「責任を知る」

世の中で起こるさまざまな出来事に対して、人はしばしば「それは自分には関係がない」と考えがちです。
しかし、松下幸之助氏は、この世界が人と人とのつながりによって成り立っている以上、「まったく無関係なことなどあり得るのだろうか?」という疑問を投げかけています。

『キリストの教えに学ぶ「責任」の本質』
松下氏はその例として、イエス・キリストの生き方を挙げています。
キリストは、自らとは縁もゆかりもない人々の罪や苦しみを背負い、さらには未来の世代までをも救おうとしました。
これは、キリストだからこそ成し得たことであり、すべての人に同じことを求めるのは難しいでしょう。
しかし、少なくとも「本来自分が負うべき責任を、安易に他人のせいにしないこと」は、私たちにもできるのではないでしょうか。

『「責任を問う前に、まず自分を省みる」』
私自身、過去を振り返ると、多くの出来事に対して無意識のうちに相手を責めていたことがあったように思います。
■「なぜこんなことをするのか?」
■「なぜ自分ばかりが損をしなければならないのか?」
■「なぜ相手は自分の気持ちを理解してくれないのか?」
そんなふうに、無条件に相手を批判したり、不満を抱いたりしていたのです。
しかし、もしそのときに「まず自分には責任がなかったのか?」と問い直していたら、もっと違う結果になっていたかもしれません。
自分の責任を認めることは、決して敗北ではなく、むしろ人としての成長につながる行為なのです。

『「相手の責任」を考える前に、「自分の責任」を考える』
松下氏は、すべての出来事に対して、まず「自分に責任があるのではないか」と考える姿勢が大切だと説いています。
■自分に責任があるなら、潔くそれを認める
■相手に責任があるように思えても、「自分にも何かできたのではないか?」と振り返る
このように、「責任を自分に問いかける」ことが、社会全体のつながりを強め、互いに助け合い、支え合う土台となるのです。
仏教には「自他一如(じたいちにょ)」という言葉があります。
これは「自分と他者は本質的に一つである」という考え方です。
つまり、相手の責任を追及する前に、まず自分自身を見つめ直すことが大切なのではないでしょうか。
その姿勢こそが、人と人がつながり、共に成長し、高め合うための第一歩となるのです。

「『道をひらく』(松下幸之助著)を読む32」➩

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