『道をひらく』(松下幸之助著)を読む114 【生きがいのある人生のために】:「勤勉の徳」
【生きがいのある人生のために】:「勤勉の徳」
■財産は失われても、身についた徳は失われない
松下幸之助氏は、どれほど大きな財産や成功を築き上げたとしても、それは一朝にして失われることがあると説いています。
形あるものは、いずれ滅びる。これはこの世の厳然たる理です。
しかし一方で、その人自身に身についた技術や習慣、人格的な修養は違います。
それは生きている限り失われず、誰にも奪われることはありません。
真に頼るべき財産とは、外にあるものではなく、自分の内に積み重ねたものなのです。
だからこそ、人は何か一つでも確かな習性を身につけなければなりません。
その最たるものが「勤勉」です。
■勤勉は、すべての価値を生み出す源泉である
松下氏は、勤勉という習性こそ何にもまして尊いとおっしゃっています。
なぜなら、勤勉は喜びを生み、信用を育て、やがて富をもたらすからです。
そしてそれらを支える土台として、人間としての「徳」を形成していきます。
ただし、勤勉の徳は一朝一夕には身につきません。
相撲取りが日々の厳しい稽古を積み重ねるように、毎日の地道な努力を重ね続けることで、はじめて勤勉が習性となるのです。
そして習性となった勤勉が、やがてその人の人格をつくり、揺るぎない徳となって人生を支える、これが松下氏の教える本質です。
■努力の積み重ねが、人を育てる
現代は効率や生産性が重視される時代です。
それ自体は間違いではありません。
しかし、効率だけを追い求めて努力を軽んじれば、人としての土台は育ちません。
勤勉とは、単に長時間働くことではありません。
自らの責任を果たそうとする真摯な姿勢であり、目の前の仕事に誠実に向き合う態度です。
その積み重ねが、信頼を生み、周囲との絆を育て、いざという時に人を支える力になります。
■私自身が実感した「勤勉の力」
振り返れば、私が若い頃は、今のような働き方改革もありませんでした。
夜遅くまで働き、時には徹夜をすることも珍しくありませんでした。
効率が良かったとは言えないでしょう。
しかし、目の前の仕事に必死で向き合い、一生懸命に働き続けたことだけは確かです。
その経験を通じて、「働くことを厭わない」という習性が自然と身についていったのだと思います。
そのおかげで、社長という重責を担うことになった時も、何とかその責務を果たすことができました。
もちろん自分ひとりの力ではありません。
多くの方に支えられ、助けられてきました。
しかし、その支えを受け止めるだけの土台をつくってくれたのは、間違いなく長年積み重ねた勤勉さだったと感じています。
■これからの時代こそ「勤勉の徳」を磨く
もちろん、今の時代に昔と同じ働き方を求めるべきではありません。
大切なのは、時代に合った形で、効率よく、しかし真摯に努力を重ねることです。
質の高い勤勉さを身につけることができれば、より短い時間でも大きな成果と徳を積むことができるでしょう。
財産は失われても、勤勉によって培われた徳は決して失われません。
それは人生における、何より確かな宝です。
松下幸之助氏が伝えたかったのは、まさにこの普遍の真理ではないでしょうか。