『道をひらく』(松下幸之助著)を読む62 【自信を失ったときに】:「心を定めて」
【自信を失ったときに】:「心を定めて」
■ 町を流した嵐が、より豊かな町をつくる
松下幸之助 は、こんな趣旨のことを語っている。
嵐が吹き荒れ、洪水が町をのみ込み、誰もが「もう終わりだ」と思う。
だが十年後、そこには以前よりも美しく、より繁栄した町が築かれていることがある。
なぜか。
壊されたからこそ、人は本気で立て直そうとするからだ。
知恵を絞り、力を合わせ、以前の問題点を見直し、より強く、よりよいものをつくり上げる。
もし災害がなければ、そこまでの変革は起こらなかったかもしれない。
■ 順調なときには見えないものがある
物事が順調に進んでいるとき、私たちは現状を疑わない。
このままでいい、今まで通りでいい、そう思ってしまう。
だが、逆境はそれを許さない。
事業の失敗、突然の環境変化、予期せぬ病、思いがけない別れ、そうした出来事は、私たちに根本から問いかける。
「このままでよかったのか」と。
その問いこそが、再生の出発点になる。
■ 災難に遭ったときこそ、腹をくくる
もちろん、苦難などないに越したことはない。
誰も好き好んで困難を望みはしない。
だが、人生にも経営にも、
予期せぬ嵐は必ずやってくる。
そのとき大切なのは、慌てふためくことではない。
「なぜこんなことが」と嘆き続けることでもない。
心を定めることだ。
よし、ここからもう一度やり直そう。
そう腹をくくった瞬間、逆境は単なる不幸ではなくなる。
未来をつくり直す起点へと変わる。
■ 私が病から学んだこと
私自身、かつて大病を患い、死を意識するほどの経験をしたことがある。
当時は、まさに目の前が真っ暗になった。
だが、その経験があったからこそ、私は自分の生き方を見直した。
健康への向き合い方を改め、生活習慣を整え、身体をいたわることを覚えた。
結果として、長く経営の現場に立ち続けることができた。
もしあの経験がなければ、無理を重ね、もっと早く倒れて再起不能になっていたかもしれない。
あの災難は、私を壊すためではなく、立て直すために訪れたのだと思っている。
■ 経営者にとっての最大の責任
とりわけ経営に携わる者にとって、健康を損なうことは個人の問題ではない。
その判断一つが、社員や顧客、取引先にまで影響を及ぼす。
だからこそ、自らを律し、整える責任がある。
これは健康に限らない。
組織の危機も、失敗も、逆境も同じだ。
逃げずに受け止め、そこから学び、より強い会社へとつくり変える。
それが経営者の務めである。
■ 不幸は、次の幸せへの入口
人生に起こる不運を、ただの不幸として終わらせるか。
それとも、新たな飛躍のきっかけに変えるか。
その違いは、出来事そのものではなく、どう受け止めるかにある。
嵐が町を流しても、そこからよりよい町を築くことはできる。
同じように、人生の困難もまた、新しい自分を築くための土台になりうる。
自信を失ったときこそ、心を定めたい。
災難は終わりではない。
より強く、より豊かに生まれ変わるための始まりなのである。