『道をひらく』(松下幸之助著)を読む71 【仕事をより向上させるために】:「しかも早く」
【仕事をより向上させるために】:「しかも早く」
■ 丁寧なら、それでいいのか
仕事において、「丁寧であること」は大切である。
確認を怠らない、細部まで目を配る、小さなミスも見逃さない、どれも仕事の基本だ。
松下幸之助 もまた、どんな小さな仕事であっても、入念に点検し、万全を期すことの大切さを説いている。
仕事を粗雑に扱って、大きな成果が生まれることはない。
その意味で、丁寧さは仕事の土台である。
だが、ここで立ち止まってはいけない。
松下氏が求めているのは、ただ丁寧であることではない。
■ 「丁寧だけれど遅い」は、まだ未完成
丁寧にやれば、時間がかかる、これはたしかに自然なことだ。
慎重に確認し、何度も見直し、万全を期そうとすれば、それだけ手間は増える。
しかし、だからといって「時間はいくらかかってもいい」という話ではない。
仕事には必ず期限があり、どれだけ質が高くても、締切を過ぎれば価値を失うことがある。
つまり、丁寧であること、そして、早いこと、その両方が求められているのである。
■ プロとは、「しかも早く」できる人
ここに、松下氏の厳しい仕事観がある。
雑に早いのは論外だが、丁寧だけれど遅いのもまた不十分。
本当のプロフェッショナルとは、念入りに、しかも早く仕事ができる人だが、これは簡単なことではない。
だからこそ、価値がある。
丁寧さと速さは、しばしば相反するもののように見えるが、優れた仕事人はその両立を目指す。
そこに、本当の力量が現れる。
■ 時間は、最も貴重な経営資源
松下氏の教えの背景には、「時は金なり」という感覚がある。
お金は取り戻せても、時間は取り戻せないのだ。
一時間、一分、一秒、それらはすべて、二度と戻らない貴重な資源である。
だからこそ、時間を浪費することは、価値を失うことに等しい。
仕事とは、限られた時間という制約中で、最大の成果を生み出す営みなのである。
■ 経営とは、時間との勝負である
私自身、経営に携わる中で、このことを痛感してきた。
経営判断には、必ずタイムリミットがある。
「いつでもいいから決めてください」そんな案件はほとんどない。
市場は動く、状況は変わる、機会は過ぎ去る、限られた時間の中で、どこまで情報を集め、どこまで考え抜き、どこで決断するか、そこが問われる。
これは現場の仕事でも同じだろう。
納期がある、締切がある、約束の時刻がある、その制約の中で、いかに質を高めるか。
そこに仕事の真価がある。
■ 速さは、雑さではない
ここで誤解してはならないのは、速さとは、慌てることではないということだ。
雑に片づける、確認を省く、粗く仕上げる、それは速さではなく、単なる手抜きである。
本当の速さとは、無駄を削ぎ落とした結果として生まれる。
段取りを整える、優先順位を明確にする、本質に集中する、その積み重ねによって、質を落とさずに速度を上げる。
これが「しかも早く」の正体である。
■ 狭い道を歩む覚悟
正直に言えば、これは非常に難しい。
丁寧さを保ちながら、さらに速さを求める、それは、狭い尾根道を歩くようなものだ。
少しでも気を抜けば、雑になる、慎重になりすぎれば、遅れる。
その絶妙なバランスを取り続けなければならない。
だが、そこにこそ成長がある。
■ 仕事の基準を一段上げる
私たちはつい、どちらかで妥協してしまう。
「丁寧だから時間がかかるのは仕方ない」、あるいは、「急いだから多少粗くても仕方ない」と。
だが、その基準のままでは、大きな進歩はない。
松下氏は、もっと高い基準を求めている。
丁寧に、しかも早く、その両立を目指してこそ、仕事は磨かれていく。
それは厳しい教えであるが、その厳しさこそが、人を真のプロの仕事人へと育てる。
今日の仕事に向かうとき、自分に問いかけたい。
丁寧だったか、そして、しかも早かったかと。