『道をひらく』(松下幸之助著)を読む70 【仕事をより向上させるために】:「働き方のくふう」
【仕事をより向上させるために】:「働き方のくふう」
■ 汗をかくことが、尊いのではない
松下幸之助 と聞くと、多くの人は、質実剛健な努力の人を思い浮かべるだろう。
額に汗し、人一倍働き、ひたすら懸命に努力する。
たしかに、それは松下氏の生き方そのものである。
しかし、それを「長く苦労して働くことこそ尊い」と解釈するのは、本質を外している。
松下氏が本当に重んじたのは、汗の量ではない。
知恵の働かせ方である。
■ 東京から大阪まで、歩いて行く必要はない
松下氏は、こう問いかける。
東京から大阪へ行くのに、わざわざ歩いていく人がいるだろうか。
普通は、電車に乗る、新幹線を使う、必要なら飛行機も使う。
より早く、より効率よく、より確実に目的地へたどり着く方法を選ぶ。
それが自然な発想だ。
にもかかわらず、仕事になるとどうだろう。
昔からこうしてきたから、みんながそうしているから、苦労しているほうが立派に見えるから、そんな理由で、あえて遠回りをしてはいないだろうか。
■ 長時間働くことは、成果ではない
仕事の世界では、ときに「誰より遅くまで残っている人」が努力家として評価されがちだ。
だが、本当に価値があるのは、長く働くことではない。
短い時間で、より大きな成果を生み出すことだ。
一時間多く働くことよりも、一時間少なく働いて同じ成果を出す、いや、それ以上の成果を出す。
そのほうが、はるかに進歩的であり、社会にとって価値が高い。
松下氏が説く「働き方のくふう」とは、まさにここにある。
■ 工夫のない努力は、ただの繰り返し
もちろん、最初は教わった通りにやるしかない。
新しい仕事を覚えるときは、まず基本に忠実であるべきだ。
私も経営を引き継いだ当初は、先輩たちから教わったやり方を必死に真似した。
それで精いっぱいだった。
だが、そこで止まってしまっては進歩がない。
このやり方で本当にいいのか、もっと早くできないか、もっと質を高められないか、そう問い続けること、そこにこそ、成長の入り口がある。
■ 仕事は「考える人」が進化させる
働き方の工夫とは、単なる時短術ではない。
仕事の本質を見つめ、より高い価値を生み出す方法を探ることだ。
同じ仕事でも、考える人と考えない人では、数年後に圧倒的な差がつく。
漫然とこなす人は、昨日と同じ今日を繰り返すが、工夫する人は、毎日少しずつ仕事を進化させる。
その小さな差が積み重なって、やがて大きな成果になる。
■ AI時代こそ、この教えが生きる
いま、仕事の世界は大きく変わっている。
Artificial Intelligence の進化によって、これまで人が時間をかけていた作業が、瞬時に処理できるようになってきた。
文章作成、分析、情報整理、発想支援、こうした分野では、AIをどう使うかが、成果を大きく左右する時代になった。
ここで大事なのは、「AIに頼るのはずるい」と考えることではない。
どう使えば、より高い価値を生み出せるか、そこを考えることだ。
もし松下氏が現代にいたなら、おそらく真っ先にこう問うだろう。
「それを使えば、もっとよい仕事ができるのか」と。
そして、役立つと判断すれば、積極的に取り入れたに違いない。
■ 工夫する人に、未来はひらく
努力は大切だ。
だが、ただ頑張るだけでは足りない。
どうすればもっとよくなるか、どうすればもっと価値を生めるか、その問いを持ち続けること。
働き方の工夫とは、より大きな貢献を生み出すための知恵である。
一人ひとりがこの視点を持てば、仕事はもっと面白くなる、組織はもっと強くなる、社会はもっと豊かになる。
今日の仕事を、昨日より少しよくする。
その小さな工夫の積み重ねが、やがて大きな道をひらいていく。