『道をひらく』(松下幸之助著)を読む72 【仕事をより向上させるために】:「けじめが大事」
【仕事をより向上させるために】:「けじめが大事」
■ 破綻は、ある日突然起こるのではない
会社の破綻、組織の崩壊、仕事の行き詰まり、それらは、ある日突然起こるように見える。
だが実際には、もっとずっと前から始まっている。
小さな乱れ、小さな妥協、小さなだらしなさ、それらが静かに積み重なり、やがて目に見える形で表れる。
松下幸之助 が「けじめをつけない経営は、やがて破綻する」と語ったのは、まさにこのことだろう。
■ 「けじめ」とは何か
では、ここでいう「けじめ」とは何だろうか。
それは特別なことではない。
朝起きる、顔を洗う、身なりを整える、静かに心を整え、夜になれば、一日の区切りをつける。
そうした日々の節目を、曖昧にせず意識して過ごすこと。
松下氏はたとえば、朝に仏壇の前で手を合わせることを挙げている。
もちろん、誰もが同じ形をとる必要はない。
大切なのは形式ではなく、意識して区切りをつけることである。
■ だらしなさは、思考を鈍らせる
けじめのない暮らしは、一見すると気楽に見える。
好きな時間に起きる、何となく仕事を始める、何となく終える。
自由で効率的に見えるかもしれないが、その実態はしばしば「だらしなさ」と紙一重だ。
だらしない生活は、心を緩ませる、心が緩めば、判断も鈍る、集中力も落ちる。
そして、良い知恵が生まれにくくなる。
■ 調子のいいときほど、乱れは見えにくい
けじめがなくても、すぐに問題が起きるとは限らない。
景気がよい、仕事が順調、周囲もうまく回っている、そんなときは、多少だらしなくても何とかなる。
だが、本当の差が出るのは苦しいときだ。
環境が厳しくなったとき、プレッシャーが高まったとき、予想外の問題が起きたとき、日頃から整っている人は、そこで踏ん張れる。
一方、基盤が曖昧な人は、たちまち崩れてしまう。
大きな堤防も、小さな蟻の穴から崩れると言われるが、仕事も経営も、まったく同じである。
■ けじめは、自分を整える技術
私自身、毎朝、仏壇に手を合わせ、感謝を伝え、今日一日をどう生きるかを静かに思う。
これは私にとって、一日の始まりを整える大切な時間になっている。
だが、これはあくまで一例にすぎない。
朝、窓を開ける、机を整える、軽く掃除をする、身支度をきちんと整える、それでもいい。
大切なのは、「ここから仕事が始まる」と自分に知らせることだ。
これは単なる習慣ではない。
心を仕事モードへ切り替えるひとつの技術である。
■ リモート時代にこそ必要なこと
現代は、働き方の境界が曖昧になっている。
特にリモートワークでは、仕事と私生活の切り替えが難しい。
起きてすぐパソコンを開く、オンライン会議だけ出る、その後また気が緩む。
こうした働き方は、気づかぬうちに集中力を奪う。
便利さは増したが、その分だけ自分でけじめをつける力が求められている。
自由とは、放縦ではない。
自ら律してこそ、真の自由といえる。
■ しつけは、未来への投資
松下氏は、これを「しつけ」とも語っている。
しつけというと、少し堅苦しく聞こえるかもしれないが、要するに、自分を整える力だ。
時間を守る、区切りを意識する、節度を持つ、こうした積み重ねが、やがて仕事の信頼につながる。
そして信頼こそが、長く仕事を続ける土台になる。
■ 一日のけじめが、人生をつくる
人生は、特別な一日でできているわけではない。
何気ない毎日の積み重ねでできている。
だからこそ、その一日にけじめをつけることが大切なのだ。
朝を整える、仕事を整える、夜を整える、その繰り返しが、やがて大きな成果を生む。
自信をつけたいなら、まず生活を整えることだ。
仕事を向上させたいなら、まず日々にけじめをつけることだ。
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