『道をひらく』(松下幸之助著)を読む65 【自信を失ったときに】:「ものの道理」
【自信を失ったときに】:「ものの道理」
■ なぜ、あの会社ばかりうまくいくのか
経営に携わっていると、ふとこんな思いにとらわれることがある。
なぜ、あの会社はあれほど順調なのだろう、なぜ、あの経営者は次々と成果を上げられるのだろう。
それに比べて自分は、毎日懸命に働いているのに、なかなか思うような結果が出ない。
そんなとき、つい考えてしまう。
「あの人たちは特別なのだろう」「才能が違うのだろう」「きっと、もっと楽にうまくやっているのだろう」と。
だが、それは多くの場合、錯覚である。
■ 見えているのは「結果」だけ
私自身、経営者になりたての頃はそうだった。
周囲の成功している経営者が、まるで軽やかに成果を上げているように見えた。
頭が良く、判断も早く、何をやってもうまくいく、そう見えた。
だが、実際は違う。
その裏では、人知れず悩み、考え抜き、走り回り、何度も失敗しながら挑戦を重ねている。
外から見えるのは、その積み重ねの先に現れた結果だけで、苦労は見えない。
これは、お互い様である。
私たち自身の努力もまた、案外、他人には見えていない。
■ 世の中には「うまい話」はない
松下幸之助 は、これを「ものの道理」という言葉で説いている。
この世には、原因なくして結果はない。
大きな成果には、それに見合う準備がある、確かな利益には、それを支える工夫と努力がある。
そこを飛び越えて、楽をして成果だけを得ようとするのは、ものの道理に反している。
それは、どこかで必ず無理が生じる。
そして、その無理は、いずれ破綻となって表れる。
■ 焦りは「欲」から生まれる
周囲と自分を比べて焦るとき、そこにはしばしば欲がある。
もっと早く結果を出したい、もっと楽に成功したい、できれば苦労は少ないほうがいい。
その気持ちはよくわかる。
だが、松下氏はそこに警鐘を鳴らす。
ものの道理を外れた願いは、結局、自らを苦しめる。
近道ばかり探しているうちは、本当の前進はない。
遠回りに見えても、やるべきことを一つひとつ積み重ねる。
それが、結局はいちばん確かな道なのである。
■ 結果は、あとからついてくる
振り返って思う。
私が少しずつでも前に進めたのは、特別な才覚があったからではない。
ただ、その時々にできることを、地道に積み重ねてきただけだ。
思うようにいかない日もあった、焦ったこともあった。
それでも、愚直に歩み続けた。
すると、不思議なもので、結果は少し遅れてついてくる。
すぐには見えなくても、努力は決して消えない。
必ず、どこかで形になる。
■ 道理にかなった努力を続ける
自信を失ったときほど、周囲の華やかな結果がまぶしく見える。
だが、その光だけを見てはいけない。
見るべきは、その背後にある積み重ねである。
そして、自分もまた、ものの道理にかなった努力を続けることだ。
焦らず、比べず、やるべきことをやる。
派手さはなくてもいい。
大切なのは、確かな歩みを止めないこと。
この世に、濡れ手に粟の成功はない。
あるのは、道理にかなった努力が実を結ぶという、静かで確かな法則だけである。