『道をひらく』(松下幸之助著)を読む69 【仕事をより向上させるために】:「自分の仕事」
【仕事をより向上させるために】:「自分の仕事」
■ その仕事は、本当に「自分のもの」なのか
私たちは日々、「自分の仕事」という言葉を何気なく使っている。
私の担当、私の会社、私の役割、たしかに間違いではない。
しかし、松下幸之助 は、そこに大切な問いを投げかけている。
そもそも、仕事とは何なのか。
それは本当に「自分のもの」なのだろうか。
■ 仕事は、社会が必要とするから存在する
どんな仕事であれ、この世に存在している以上、そこには必ず理由がある。
誰かが必要としている、社会が求めている、だから、その仕事は存在している。
もし世の中に必要とされなければ、その仕事は自然に消えていくだろう。
そう考えると、仕事に上も下もない。
華やかな仕事もあれば、地味な仕事もある。
人前に立つ仕事もあれば、誰にも見えないところで支える仕事もある。
だが、そのすべてが社会を支えるために必要だから存在しており、そこに優劣はない。
■ 私たちは「やらせてもらっている」
ここが非常に大切なところだと思う。
仕事は、自分が勝手に所有しているものではない、社会に必要な役割を、たまたま自分が担わせてもらっている、そう考えるべきなのだろう。
この視点に立つと、仕事への向き合い方が大きく変わる。
「自分の好きなようにやればいい」という発想ではなくなる。
どうすれば、より世の中の役に立てるか、どうすれば、求められている価値をもっと高められるか、そうした問いが自然に生まれてくる。
■ 改善は、自己満足であってはならない
もちろん、仕事を工夫し、改善することは大切だ。
もっと効率よくできないか、もっと質を高められないか、そう考える姿勢は、仕事を向上させる原動力になる。
だが、その改善が単なる自己満足になってはいけない。
自分が気持ちいいから、自分が評価されたいから、ただ利益を増やしたいから、そうした発想だけでは、仕事の本質を見失う。
改善とは、あくまで社会への貢献をより高めるために行うもの、そこを忘れてはならない。
■ 仕事が伸びるかどうかは、世の中が決める
これもまた、松下氏の重要な教えであるが、仕事を無理に大きくしようとしなくてよい。
無理に拡大しよう、無理に目立とう、無理に儲けよう、そうしたエゴは、かえって仕事を歪める。
大切なのは、世の中の求めに誠実に応え続けることだ。
必要とされる仕事なら、自然と広がっていく、社会が、その仕事を育ててくれる。
これは経営においても、個人のキャリアにおいても同じだと思う。
■ 私自身の反省
私もかつて、経営を任されたとき、そんなふうには考えられていなかった。
正直に言えば、不安のほうが大きかった。
「自分に務まるのだろうか」「なぜ自分がやらなければならないのか」、そんな気持ちがあった。
経営とは、想像以上に重い責任を伴う仕事である。
逃げ出したくなることもあった。
だが今振り返れば、それは「自分がやる仕事」、としか捉えていなかったからだと思う。
もしあのとき、これは社会に必要な役割であり、たまたま自分が担わせてもらっているのだ、そう受け止められていたなら、もっと腹が据わり、もっと素直に仕事と向き合えたのではないかと思う。
■ 仕事への誇りは、ここから生まれる
仕事に誇りを持つとは、肩書きを誇ることではないし、規模を誇ることでもない。
この仕事が誰かの役に立っている、社会を少しでもよくしている、その実感を持つことだ。
そう思えたとき、仕事は単なる労働ではなくなり、社会への参加となり、自分の使命となる。
■ 「ありがたい」と思えるか
自信を失ったときほど、思い出したい。
この仕事は、社会から与えられた役割である、やらされているのではない、やらせてもらっている。
そう思えたとき、不思議と力が湧いてくる。
ありがたい、だからこそ、精一杯応えよう。
その謙虚さと誇りの両方を胸に、今日の仕事に向き合いたい。