【自信を失ったときに】:「懸命な思い」

■ 人生は平坦な道か、それとも険しい山道か
人生とは、どのような道なのだろうか。
穏やかに続く一本道なのか、それとも、峰があり谷があり、起伏の連続する険しい山道なのか。
おそらく多くの人は、後者だと感じるだろう。
仕事の悩み、人間関係の摩擦、思いがけないトラブル、将来への不安などがあり、日々を生きる私たちにとって、人生は決して平坦には見えない。
むしろ、次々に現れる坂や谷を越えながら、息を切らして歩いているように感じることのほうが多いでのはないか。

■ 視点を変えると、景色は変わる
だが、松下幸之助 は、ここで興味深い視点を示している。
もし、もっと高い場所から――いわば天から人生全体を見渡したなら、どうだろうか。
私たちには巨大な壁に見えるものも、はるか上空から見れば、小さな起伏にすぎないかもしれない。
深い谷だと思っていた場所も、全体の流れの中では、ほんのわずかな凹みに見えるかもしれない。
目の前の苦労に囚われていると、それが人生のすべてのように思えてしまう。
だが長い時間軸で振り返れば、「あれほど悩んでいたのに、案外乗り越えられた」、そう思えることが少なくない。

■ 過ぎてしまえば、大半は越えられている
私自身、経営の現場で日々さまざまな不安を抱えてきた。
資金繰りは大丈夫だろうか、この新規事業はうまくいくだろうか、採用した人材は活躍してくれるだろうか、取引先の方針転換は、会社にどう影響するだろうか。
その時々は、どれも重大問題に思え、頭を抱え、眠れぬ夜を過ごしたこともある。
だが振り返れば、多くの問題は乗り越えてきた。
もちろん簡単ではなかった。
それでも、一つひとつ向き合い、考え、動き、対処していくうちに、気づけば越えていた。
過ぎてみれば、必要以上に大きく構えていたことも少なくなかった。

■ 大切なのは「静かに懸命である」こと
では、起伏のある人生をどう歩めばいいのか。
ここで大切なのが、懸命な思いである。
ただし、それは慌てふためくことではない。
焦りに飲まれ、右往左往することでもない。
心は静かに、しかし行動は懸命に。
どんな状況でも、やるべきことを見極め、一つひとつ誠実に取り組む。
平時であっても、有事であっても、目の前の状況に過剰に振り回されず、淡々と、しかし全力で向き合う。
この姿勢が、人生を支える。

■ 懸命に生きれば、起伏は恐くない
人生から山や谷が消えることはない。
困難も不安も、これから先きっと訪れる。
だが、懸命に向き合う覚悟があれば、それらは私たちを押し潰すものではなくなり、越えるべき通過点になる。
そして振り返ったとき、「あの経験があったから今がある」、そう思える日が来る。
自信を失ったときこそ思い出したい。
人生の起伏に振り回される必要はない。
心は静かに、思いは懸命に。
その姿勢で歩み続ければ、どんな道も、やがて自分の歩んできた確かな道になる。

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