『道をひらく』(松下幸之助著)を読む60 【自信を失ったときに】:「紙一重」
【自信を失ったときに】:「紙一重」
■ 天才と凡人の差は、本当に大きいのか
私たちはよく、こう考える。
「あの人は特別だ」「もともと才能が違う」「自分には到底無理だ」
卓越した経営者や優れたリーダーを目の前にすると、そこには埋めがたい能力差があるように見える。
たしかに、生まれ持った資質の違いはあるだろう。
努力の総量にも差はある。
だが、松下幸之助 は、その差は案外「紙一重」だと言う。
これは、実に勇気づけられる言葉である。
■ 大きな差は、小さな違いの積み重ね
たとえば、同じ会議に出席していても、ある人は相手の言葉の本質を聞こうとする。また、ある人は表面的な情報だけを受け取る、失敗から学ぶ、言い訳を探す、あと五分考える、そこで思考を止める。
その瞬間の差は、ごくわずかだが、その「わずかな違い」が一日、一週間、一年と積み重なったとき、やがて埋めがたいように見える大きな差となって現れる。
大差は、最初から大差ではなく、小さな差の蓄積にすぎない。
■ 紙一重の差を見抜く力
では、その「紙一重」はどうすれば見えるのか。
松下氏は言う。
その鍵は、素直な心にある。
素直な心とは、先入観を捨て、物事をありのままに見る姿勢だ。
「自分には無理だ」「どうせ才能が違う」「自分には向いていない」
そう決めつけた瞬間に、成長のヒントは見えなくなる。
一方で、心をフラットにして見れば、成功している人との違いは、案外ささいなところにあると気づく。
ものの見方、考え方、力の入れどころ、そのわずかな違いこそが、未来を分ける。
■ 私自身が学んだこと
振り返れば、私自身もかつてはそうだった。
「自分は偉大な経営者にはなれない」「頭も特別よくないし、飛び抜けた才能もない」
そう思っていた。
だが結果として、長年にわたり経営に携わってくることができた。
なぜだったのか。
振り返ると、それは特別な才能ではなかったと思う。
ただ、その時々にできる範囲で、目の前の課題に真剣に向き合い、少しずつ工夫を重ねてきた。
その積み重ねが、知らず知らずのうちに「紙一重の差」を生んでいたのだろう。
■ すべての人に希望がある
この教えが素晴らしいのは、誰にでも希望を与えてくれるところだ。
もし差が圧倒的な才能だけで決まるなら、多くの人は最初から諦めるしかない。
だが差が紙一重なら、話は違う。
今日のものの見方を少し変える、考え方を少し変える、あと少しだけ深く考える、もうひと踏ん張りしてみる、その小さな違いが、やがて人生を大きく変えていく。
自信を失ったときこそ思い出したい。
天才と凡人を分けるものは、最初から決まった大きな差ではなく、日々の小さな選択の積み重ねだ。
このことを胸に、未来に希望をもって進んでいきたい。