『道をひらく』(松下幸之助著)を読む105 【自主独立の信念をもつために】:「学ぶ心」
【自主独立の信念をもつために】:「学ぶ心」
■人の知恵は、すべて学びの上に成り立っている
松下幸之助氏は、「自分の知恵だ」と思っているものの多くは、実は他者から学んだものにすぎないと説いています。
これは実に本質を突いた言葉です。
私たちは、ともすれば自分の成果や発想を、自分だけの力で生み出したものだと思いがちです。
しかし、冷静に振り返れば、それは思い違いにすぎません。
人は何も教わらずして、何かを生み出せる存在ではないのです。
幼いころは親から学び、学校では先生から学ぶ、社会に出れば、先輩や上司、顧客や仲間から学ぶ、その積み重ねの上に、ようやく自分なりの考えや判断が育まれていくのです。
つまり、人の知恵とは、学びの蓄積にほかなりません。
■学ぶ人だけが、成長する
松下氏は「学ぶ心さえあれば、万物すべてこれ我が師である」と語っています。
この言葉には、深い真理があります。
学びの対象は、人間だけではありません。
自然の営み、草木の生長、流れる雲、動物のふるまい、幼子の無邪気な姿、あるいは先輩からの厳しい叱責、こうした一つひとつに、学ぶべき示唆があります。
大切なのは、「何から学べるか」ではなく、「学ぼうとする心があるかどうか」です。
同じ景色を見ても、何も感じない人がいる一方で、そこから深い示唆を得る人もいる。
その違いを生むのが、学ぶ心です。
■学ぶ姿勢が、新しい知恵を生む
優れた仕事をする人には、共通点があります。
それは例外なく、よき学び手であることです。
学び続ける人だけが、新しい知恵を得ます。
新しい知恵を得る人だけが、新しい価値を生み出せます。
逆に、「自分はもう十分知っている」と思った瞬間に、成長は止まります。
慢心した人間から、革新は生まれません。
松下氏がいうように、繁栄への第一歩は、まさにこの「学ぶ心」にあるのです。
■私を支えたのも、学ぶ姿勢だった
私自身を振り返ってみても、経営に携わるようになった当初は、十分な指導を受けられる環境ではありませんでした。
待っていても、誰かが丁寧に教えてくれるわけではない。
そんな状況の中で、私は必死でした。
本を読みあさり、周囲の人に教えを乞い、あらゆる出来事から何かを吸収しようともがいていました。
それは決して余裕ある学びではありません。
生き残るための必死の学びでした。
けれども、振り返れば、そのときの貪欲な学ぶ姿勢こそが、私を支えてくれたのだと思います。
あの時に学ぶことをやめていたら、経営者として今日まで歩むことはできなかったでしょう。
■学ぶ心を失った瞬間、人は停滞する
どんな人も、最初からできるわけではありません。
生まれながらに完成された知恵を持つ人などいないのです。
誰かから教わる、何かを観察する、失敗から学ぶ、経験を糧にする、そうして少しずつ、自分を育てていく、それ以外に成長の道はありません。
だからこそ、どんな立場になっても、学ぶ心を失ってはならないのです。
松下幸之助氏のこの教えは、極めてシンプルです。
成長したいなら、学べ。
繁栄したいなら、学び続けよ。
自主独立とは、独りよがりになることではありません。
謙虚に学び続けることで、自らを高めていく姿勢なのです。