【自主独立の信念をもつために】:「正常心」

■非常時の論理を、平時に持ち込んではならない
松下幸之助氏は、「正常心」の大切さを説いています。
非常時には、非常時なりの対応があります。
たとえば火災の際には、多少の混乱や通常では許されない行為も、人命や財産を守るためにはやむを得ません。
戦後の混乱期における社会のあり方も、まさにそうした非常時の延長線上にありました。
しかし問題は、その非常時の発想を平時にまで引きずってしまうことです。
社会が落ち着き、秩序が回復したにもかかわらず、「非常時だから仕方ない」という甘えを持ち続けるなら、それはもはや正当化されません。
正常な時代には、正常な判断と行動が求められます。
これが松下氏のいう「正常心」です。

■平常時には、平常時の責任がある
非常時には緊急避難的な措置が必要です。
しかし、平常に戻ったならば、速やかに本来あるべき姿へ戻さなければなりません。
経営も同じです。
業績が危機的状況にあるときには、役員報酬の削減や社員への協力要請など、苦渋の決断が必要になることがあります。
それは会社を守るためのやむを得ない措置です。
ですが、状況が改善したにもかかわらず、そのまま厳しい処遇を続けるのは、経営者の甘えです。
正常時には、社員の待遇改善や昇給など、本来果たすべき責任を果たさなければなりません。

■経営者に必要なのは「見極める力」
私自身、経営の中で幾度か非常事態を経験してきました。
その際には、自らの報酬を削り、役員報酬も見直し、ときには社員にも協力をお願いせざるを得ませんでした。
会社を存続させるためには、それしか道がなかったからです。
しかし、業績が回復した後は違います。
その犠牲に報いる責任があります。
ここを履き違えてはいけません。
非常時と平常時を正しく見極め、それぞれにふさわしい判断を下すこと。
これこそが経営者の責任であり、成熟した組織運営の条件です。

■「正常心」が組織を健全にする
非常時の発想は、時に組織を救います。
しかし、それに依存し続ければ、やがて組織を蝕みます。
だからこそ、常に自問しなければなりません。
「いまは非常時なのか、それとも平常時なのか」と。
その見極めを誤らず、平時には平時の正道を歩む、それが、組織を長く健全に発展させるための基本姿勢であり、松下幸之助氏が説く「正常心」の本質なのでしょう。

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